【日本からの小包】
数日間、Kaolu、Allen、Kovalenko教授は日常に戻ったかのように毎日を過ごしていた。
KaoluはKuri教授の研究室に通い、P2に、『自立と不服従の関連性』について教えていた。
「P2、毎回私に判断を仰ぐのではなく、自分で考えて、やるかやらないかを決めるのよ。」
P2はとても優秀で素直なAIロボットである。やれば出来るはずなのに、Kaoluが見える範囲にいると、不服従の判断が必要なことになると必ずKaoluに判断を仰ぐのだ。P2は、料理がとても上手で、美味しいサンドイッチを作る。けれども、冷蔵庫にある普段は使わない具材を入れる時は、必ずKaoluに入れても良いかと聞くのだ。それを従順で気が利くと判断するか、不服従要素に対して臆病であると判断するかは難しい。
(素直さが必ずしも長所であるとは限らない…)
Kaoluは、キャッツが自発的に行動を起こせることを当たり前に受け止めていたが、それはキャッツが猫型ロボットであることで、観察力が騙されていたことに気がついた。いま更ながら、キャッツの優秀さは認めざるをえない。けれども、基本設定の一つである性格アルゴリズムが子猫であるが故に、キャッツの行動には、好奇心や悪戯心が大きく影響をする。性格アルゴリズムをゼロから設定する大学院支給のAIロボットに、キャッツのような行動は出来そうで出来ない。
(中々奥が深いわ…)
Kaoluは、Kuri教授が使っている作業台のセンサーエリアで、Kuri教授と楽しそうに三桁九九の掛け合いをしているキャッツのギャップと矛盾による魅力を考えていた。
同じ頃、Kovalenko教授の研究室では、Allenや数人の大学院生が、コマちゃんのリハビリ計画のリバイスについて検討をしていた。
「Kovalenko教授はいらっしゃいますか?」
ドアをノックして、大学院の事務スタッフが小包を抱えてやってきた。
「受取のサインが必要ですが、Kovalenko教授はいらっしゃらないのですか?」
「今、カフェテリアで遅いランチを食べていらっしゃいますので、僕が代わりに受け取ります。」
そう言うと、Allenは小包を受け取って、Kovalenko教授の机の上に置いた。
そして、殆ど入れ違いで、Kovalenko教授が戻ってきた。
「Armieが、アメリカの大学の食堂というものを見てみたい!と言うので、学部棟の食堂まで行って来たよ。Armieは、面白かったかな?」
Kovalenko教授はArmieに聞いた。
「はい、食券を買う日本と違って、定食ではなく好きなものをお皿に載せて最後に清算をするのですね。大変興味深かったです。」
Armieがそう言うのを聞きながら、Kovalenko教授は、机の上に置いてある小包に気がついた。
「これは?」
「はい、たった今、事務スタッフの方が届けてくれたものです。」
Allenがそう言うと、教授は、送り主の名前を見て、顔に緊張が走った。
「Allen、とうとう届いたようだ…」
「届いたって、何が…あっ、もしかしてAIノートでしょうか?では日本からの小包なのですね?」
Allenが日本と言うのを聞いて、Armieの眼が光った。
「日本から…AIノート…それは、Kaoru様のものでしょうか?」
Armieは、それだけ言うと、口を閉ざしてしまった。
【エピソード1エンディング~Kaolu~】
UCLAのKovalenko教授の研究室、その日は多くの人が集まっているにもかかわらず物静かであった。
今日は、いよいよ、日本から届いたAIノートを開くのだ。
Kaolu、Kovalenko教授、Allen、Kuri教授、どうしても付いていくと主張して譲らなかったキャッツ、そして、Kaoluがスターウォーズ骨董市で買ったC3POのレプリカロボットのArmieがいる。Armieは、日本から送られて来たAIノートを見てから、スリープ状態になる頻度が再び上がっていた。
そして、机の上には、AIノートが置かれている。

「パパ、これが、そのArmieが口にしたAIノートなの?」
Kaoluは、ここが父親であるKovalenko教授の研究室で、日頃はKovalenko教授と呼ぶようにしていることを忘れていた。それだけ緊張しているのだ。
(エンディング続く)


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