【ローラのご機嫌】
Kaoluは、P2とキャッツを連れて、ペット用品スーパーに寄ってから家に帰った。スーパーで、ローラが大好きなおやつを買ったのだ。
(これで機嫌直るかな…)
しかも、一緒に連れてきたキャッツが、目ざとく、猫用ベッドを見つけて、
「僕、このベッドが欲しい!買って、Kaolu~、お願いだよ~」
としつこく言うので、根負けをして本物の猫用ベッドまで買わされたのだ。
「キャッツ、これどこで使うの?」
キャッツは、嬉しそうに答えた。
「いつか、Kuri教授の研究室で、夜通し勉強するんだよ!僕が、Kuri教授に頼むんだ。」
そう言って、満面の笑みを浮かべているキャッツだった。
そして、全身からKaoluへの不信感を漂わせていた今朝のローラを思い浮かべて、Kaoluは少し憂鬱になった。
「ローラ、起きているかな?帰ったわよ!」
普段なら、こんなに早く大学から帰ってくると、ローラはしっぽを千切れんばかりに振るのだが、今日はちらっとKaoluの方を見て、また縮こまって寝たふりをした。
「P2、今日の夕食のサンドイッチを作っておいて、キャッツ、少し遊んでなさい。」
「Kaolu、僕やることがあるから、Kaoluのパソコン貸して。」
「ゲームとかで遊ぶのはダメよ!」
「違うよ、やらなければいけないことがあるんだ!大丈夫、悪戯しないから。」
「P2、サンドイッチを作り終わったら、こっちに来てね!」
キャッツは、P2とのコミュニケーションが急激にスムーズになっている。AIロボット同士の会話は、簡単そうで意外に難しい。(AI相互コミュニケーションを完全にマスターしているのね…)とKaoluは冷静に分析して、結論づけた。
キャッツが何をしようとしているのか気になったが、まずはローラの機嫌を直すことが最重要課題だ!
「ローラ~、こっち向いて~」
ローラは少し躊躇しているようだったが、Kaoluの方を振り向いて軽く尻尾を振った。
「ローラ、今日は偉かったね、ほら、ローラが好きなビスケットよ!」
そう言って、ローラが一番大好きなおやつをローラに見せると、ローラはいきなりKaoluに飛びついてきた。朝ご飯を食べてから何も食べていなかったローラは、空腹を我慢できなかったらしい。Kaoluはローラとしばらく遊びながら、ビスケットを少しずつあげて、根気強く仲直りをした。
「P2、サンドイッチ作るのは終わった?」
キャッツは、キッチンでP2の後ろから声を掛けた。
「はい、キャッツさん、それで、パソコンで何をするのですか?」
P2はKaoluのパソコンを立ち上げてパスワードを入力した。P2はKaoluのパソコンの三段階セキュリティ設定を忠実に守ることができる。機密データ等にはアクセスできないように設定を一部解除して、キャッツが見えるようにと、パソコンの前を少し空けた。
「このパソコンには、日本語フォントはインストールされている?」
「確認しますね、キャッツさん、残念ですが、日本語フォントは入っていませんね。日本語フォントが必要なのですか?」
「そうだよ、P2、日本語フォントをダウンロードしてくれる?」
「分かりました、少しお待ちください。」
P2が滑らかにパソコンを使っている。
キャッツは尊敬の眼差しで、P2の顔を見ていた。
「あ、終わったね。じゃ、日本語のカタカナで“キャッツ”って入力して…そしてここに貼りつけて…」
キャッツは、自分のAcimo Spaのフリーパスのデータをパソコンに転送して、氏名欄を指した。
P2があっという間に、『キャッツ』と入力が終わると、目を輝かして言った。
「うん、これで完璧だよ!これで印刷をして、このパスケースに入れて…」
キャッツは、名前が入ったAcimo Spaのパスを満足げに眺めた。P2は、自分の設定に日本語が既にインストールされていることを、こっそり確認した。

「さぁ、着いたよ、Armie。ここが私の家だ。」
大人しくKovalenko教授の車の後ろに乗っていたArmieは、教授の後ろから家に入っていった。
「明るくて開放的なお部屋ですね。私が知るロサンゼルスの雰囲気にとても合っています!一通り部屋を見てもよろしいでしょうか?」
「左手奥の部屋以外は良いよ!」
多くのAIロボットを作って来たKovalenko教授であったが、こんなに礼儀正しくて人間的な反応をするロボットは初めてであった。
(どうやったら、こんなに優しいAIを育てられるのだろうか?)
楽しそうに家の中を見て回ったArmieは、どこで見つけたのか、ローラの足拭きに使っている雑巾を手に取り、おもむろに窓拭きを始めたのだった。
それを見て、Kovalenko教授は思わず苦笑いをしていた。


Leave a Reply