AIハンドラー第24話

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【キャッツ、スペルを考える!】

Kaolu、Allen、Kovalenko教授、Kuri教授、誰もが今日は口が重い。
Kovalenko教授が、Armieの正体を知るカギとなるはずのAIノートが保管されている場所を見つけて、現在照会中であることを話したのだ。
「とにかく、Kovalenko教授、そのAIノートが日本から届くのを待ちましょう!」
常に冷静なKuri教授がそう言ったことで、この重さは一旦封印された。

そして…

Acimo Spaの1階ロビーには、キャッツの前足と尻尾のセンサーに反応するデジタルボードが置かれている。
オイル風呂が終わり、前足の動きが格段にスムーズになったことを知ったキャッツが、どこからか見つけてきたのだ。
「では、これから、キャッツのローマ字スペルの検討会を始めます!」
そう言うと、キャッツは、自慢の尻尾センサーからビームを放った。

Cats
Cayt
Kats
Kyats
Catz

次々と映し出されるキャッツのスペリング候補を、居合わせたAIロボット達は静かに見つめている。
「皆さん、こんにちは、キャッツです。僕の固有識別名称は日本語でキャッツと書きます。けれども、気まぐれなパパ、つまりKovalenko教授は未だに英語のスペルを決めてくれません。
ですから、僕のAcimo Spaの年間パスの氏名欄は…

なんと!空白なんです!!

こんなことがあって良いのでしょうか?
そこで、皆さんに僕の名前の英語スペルを検討して貰いたいです!」
真剣そのもののキャッツの言葉を、礼儀として静かに聞いていたAIロボット達がざわついている。
あちらこちらから、こそこそと話す声が聞こえる。
キャッツは、何か素晴らしいアイデアが出てくるかとワクワクしながら待った。
そして、P2の横に座っていたマイクロソフト型ロボットがおもむろに言った。
「キャッツさん、私達は、固有識別番号の記号しか持っていません。UCLAの大学院の学生さん達は、仮の管理者です。私達は、その学生さんが卒業をすると新しい管理者となる学生さんの元に行きます。ですから、固有識別名称はないのです。私達は、日頃からニックネームが欲しいと皆で話していました。キャッツさんは、既にニックネームにもなる「キャッツ」という美しい日本語カタカナの名前をお持ちです。それで十分ではないでしょうか?」

キャッツは、思いがけない展開に、身体が固まった。
そこにKaoluが現れた。
「キャッツ、その年間パスは、私が作ったのよ。私は日本語が読めないし、PCでキャッツと打ち込めなかっただけよ!皆をこんなことに巻き込んで…ごめんなさいね。」
それを聞いて、Acimo Spaのロビーは大きな笑いに包まれた。
Kaoluの話が、キャッツが招集した会議の終わりを告げる合図となった。ロビーに集まっていたAIロボット達は、三々五々散っていった。
そして、ロビーにはArmieが静かに座っていた。
「Armie、居たのね!オイル風呂は気持ち良かった?」
Kaoluは、Armieに近づきながら優しく聞いた。
「はい、Kaoluさん、とても気持ちが良かったです。こんな素晴らしい体験が出来るなんて、誰にお礼を申し上げれば良いのでしょうか?」
「いいのよ、お礼なんて。さぁ、一緒にKovalenko教授の研究室に帰りましょう。」

Armieは、オイル風呂の効果なのか、かなりスムーズに歩いている。それでも人が歩くよりはゆっくりと歩いている。興味深げに、UCLAのキャンパスを見回しているのが微笑ましい。キャッツは、何とか自分で歩いていたが、やはりKaolu達に付いて来ることは難しいようだ。見かねたP2がヒョイっとキャッツを抱き上げた。

Kaoluに連れられて、ArmieはKovalenko教授の研究室に戻った。
Kovalenko教授は、 Teamsで何か会議をしているらしい。Kaoluは邪魔をしないようにそっと部屋の奥に入った。
Armieを、アナライザーにかけてオイル風呂の効果を検証した。検証データを教授が後から見られるように整理して、 Teamsの会議が終わったKovalenko教授に話しかけた。
「パパ、Armieの身体的機能はオイル風呂で平均20%アップしたみたい。ここまで自分で普通に歩いてきたわ。」
「そうか、Armieの身体はかなり古いロボットだから、むしろオイル効果は即効性があるのだろう。」
「ところで、Kaolu。ArmieはKaoluが理解できない古い設定のAIだから、設定が安定するまで私が預かることにしよう!」少し嬉しそうに、Kovalenko教授は言った。
「本当?パパ?助かるわ。もしArmieとキャッツが私の想定外のことを二人で始めたら、私には対応できないわ。よろしくお願いします、Kovalenko教授。」
黙って教授とKaoluの会話を聞いていたArmieは、その会話が終わると、教授のそばに歩いて行って、かなりスムーズになった身体を折り曲げながらKovalenko教授に言った。
「ありがとうございます、Kovalenko教授。私は、家事はあまり出来ませんが、掃除は得意です。雑巾を用意しておいてください。」
それを聞いて、キャッツはすかさず聞いた。
「Kaolu、雑巾って何?」

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