【Kovalenko教授の告白】
KaoluがKovalenko教授の研究室に行った時、Kovalenko教授は研究室を留守にしていた。
研究室のオープンエリアには、『Kaolu、Allen、Armieの故障した回線を探して、直せるようならば直すように』と書いたメモを胸に貼り付けたArmieが一人で立っていた。
「Armie、何しているの?」
「何故、私がここにいるのか考えていました。けれども、全く分かりませんでした。申し訳ありません、Kaoluさん。」
寂しそうな表情でそういうArmieを、Kaoluは(絶対に助けないといけないわ!)と心に誓った。
「Kaolu、起きなさい!」
Kovalenko教授の声でKaoluは起こされた。
「あれ?私、寝ちゃった?」
「私の椅子でぐっすり眠っていたよ。」
Armieの回線を調べているうちに、疲れて眠ってしまったらしい。
「Kaolu、大丈夫?疲れている?」
(キャッツの声だわ)
(でもキャッツが私のことを気遣ってくれるのを初めて聞いたわ)
まだ半分寝ぼけながら、声の方を向いた。

Kuri教授がKovalenko教授と並んでいて、キャッツはKuri教授に抱かれている。
「あっ、すいません!寝るつもりはなかったんですが‥‥」
Kaoluは、焦って椅子から立ち上がった。
眠気覚ましのコーラを飲みながら、Kaoluは大事な用を思い出した。
「パパ、じゃなくてKovalenko教授、何故キャッツの個体認識名称は日本語なの?」
それを聞いて、同じくコーラを飲んでいたKuri教授が、不思議そうな顔で言った。
「Kaolu君、キャッツのフォルムデザインは、日本の企業が担当したんだよ。まだ聞いていなかったのかな?」
「あっ、そうなんですね。えっ?何故Kuri教授がご存じなのですか?」
「キャッツの個体登録を出したのを私だよ。Kovalenko教授は、イスタンブールでエアバスの最終調整で大変だったからね。」
天才肌と言われているKuni教授とKovalenko教授は、性格も思想も全く違う。それなのに、意外と仲が良いのだ。Kaoluは、Kuri教授の研究室に頻繁に現れるKovalenko教授に最初はびっくりしていたのだ。けれども、最近ではすっかり慣れてしまった。
「Kaolu、日本語は美しい言語だよ!私は、英語よりも日本語の文字の形に惹かれるんだ!」
Kovalenko教授のズレた告白を聞いて、Kaoluはコーラを落としそうになった。
「と言うのは半分冗談で半分は本当だ。」
そういうと、Kovakenko教授は、遠くを見るような、過去を遡っているような目で静かに言った。
「私が若い頃、私の母国ウクライナはロシアに侵攻されて絶体絶命となった。その時、日本からたくさんの義援金が送られてきたんだよ、地理的には利害関係がほとんどないのにね。そのお金のおかげで治療を受けることが出来て、私は大学を続けられた。その時から、日本は私にとって特別な国になったんだよ、Kaolu。」
Kaoluは、そうだった…と思い出した。
「パパ、私、すっかり忘れていて…ごめんなさい。」
コーラを飲みほしたグラスを置こうと視線を移したKaoluが、ふとキャッツを見ると、キャッツの首に小さなメモリーキットが掛けられている。
「キャッツ、その首に掛けているのは何?」
Kaoluに聞かれて、話したくてウズウズしていたらしいキャッツが話し始めた。
「僕ね、Kuri教授から、3桁九九のコツを教わったんだよ!これはね、今日僕が真面目に勉強したデータのログだよ。Kuri教授が、Kaoluとパパに見せなさいと、くれたんだよ!」
(Kuri教授が相手だと、キャッツは真面目に勉強するのかしら?)
Kaoluは、今度Kuri教授に、キャッツに勉強を仕向けるコツを密かに聞こうと心に誓った。
「Kaolu君、キャッツは流石に賢い。私も勉強になったよ。これからも研究室に来る時はキャッツを連れて来なさい。」
そう言って、Kuri教授は、にこやかな顔で「では」と言って、Kovalenko教授の研究室を後にした。
「Kaolu、ローラの5種混合接種はしたのかな?」
パパの顔になっておもむろにローラの予防注射の話しをした声に、Kaoluは、ハッとした。
「予防注射の予約、明日だったんだわ!大変!!」



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