1週間ほど前から、Open AIに関する、いわゆる『AIの脱走』が話題になっている。
この事件に関しては、日本語記事の曖昧表現があまりにも酷いと感じたので、私なりに事実を整理しようと思い立った。
まずは、第1報の記事より
オープンAIのブログによると、社内でサイバー攻撃能力をテストしていたところ、AIが隔離環境を出てインターネットに侵入した。ハギングフェイスのサーバーの未知の脆弱性を発見し、テスト目標を達成するために侵入したとみられるとしている。
(2026年7月22日産経新聞ネットサイトより)
恐らく、これを読んだ大半の人は、「AIが勝手に脱走するなんて、なんて恐ろしいことが起こっているんだ!」と感じたはずである。私も、素直に最初はそう思ったのである。
しかし、待てよ…
今のところ、Open AIはフィジカルAIを作っていない。では、なんで、隔離環境から勝手に出ていけるのよ?という素朴な疑問…
この記事が出たのは、1週間ほど前。
その頃、私は、手塩にかける(笑)物語「AIハンドラーシーズン2」の執筆中で、『AIロボットのP2が、ロサンゼルス市営バスに初めて乗る』ために、ロボットが単独でバスに乗るために、どういう行政手続きが必要になるのだろうか?と、未来を想像して四苦八苦していたので、続報が出るまで静観しようと決めた。
そして、続報がいくつか出ている。
例えば、これなど。
「AIの暴走」ではない、オープンAIのモデルが不正侵入した理由
https://www.technologyreview.jp/s/386637/openai-called-the-hugging-face-attack-unprecedented-but-weve-been-here-before/
今回の事件を正しく理解するために必要なポイントが2点ある。
一つは、今回の事件はサンドボックス(テスト環境でネット接続されていない環境ではあるけれども、内部の一部コンポーネントが外部ネットに到達できる状態だったということ“isolated sandbox with an internet‑reachable dependency”)で起こったということ。
もう一つは、今回の事件を引き起こしたのは、対話型AIではなく、自律型エージェント(autonomous agent)AIであったということ。
対話型AIと自律型エージェントの違いは、ここでは、対話型AI(ChatGPTなど)は、ユーザーの指示がないと勝手に行動しない、自律型エージェントは、タスク達成のために自律的に外部ツールを呼び出すことができると理解すると事件が分かりやすいと思う。
自律型AIは、与えられたミッションを自ら解決するために動くAIである。その機能をサンドボックスでテストをしたら、その回答を探すために、AIがサンドボックスの脆弱性を見つけてネット環境に接続することに成功して、その回答を持っているであろう企業の内部に侵入して、その回答を見つけるために、その企業の内部で探しまくってしまった…
そして、Open AIの社員は、それをリアルタイムに把握することができなかった可能性があることが最大の問題であろうと、私は考えている。
サンドボックスというテスト環境は、決済事業では極めて重要であり、頻繁に使われているので、個人的には、「最初からサンドボックスって書いてくれれば分かりやすいのに!!」と、私は思ったわけである。
(Stripのサンドボックスの説明が分かりやすい)
サンドボックス | Stripe ドキュメント
ちなみに、英語の記事では、Sandboxも明示されているし、autonomous agent AIも明示されている。
日本の経済記事の構成に問題があるのか?それとも、誰もが分かるようにするために、記事を平易に書き過ぎたことが問題なのか?
起こってしまった事件は確かに深刻であるが、それ以前に、事件を正しく認識できないとしたら、それはもっと深刻なことであると思ったのは私だけだろうか?
問題は、AIが意思を持って逃げ出したことではない。人間がAIエージェントに与えた環境と権限を、まだ十分に制御できていないということである。
私が、AIハンドラーという物語を書いていて大変なのは、UCLAという閉じた世界ではなく、ロサンゼルス市という開いた世界を舞台にしている点である。開いた世界にAIを置く以上、お花畑的なストーリーは一切書けないのだと、今回の事件を見てあらためて感じている。


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