【賑やかな家族】
「Kaolu、また遅刻するよ~」
キャッツが耳のそばで大きな声で言った。Kaoluは思わずベッドの上に起き上がった。
「あっ、びっくりした。キャッツ、今日は日曜日よ、しかも昨日は帰ったのは1時近くだったじゃない。もう少し寝かせてよ。」
「でも、ローラが怒っているよ!」
キャッツに言われて、Kaoluは昨日ローラを散歩に連れて行かなかったことを思い出した。(今日はローラを満足させる日にしないと、また子犬の時のようにクッションを引き千切ってボロボロにするわ…)
Kaoluが起きたことを知って、ローラがやってきた。前足をベッドにかけて鼻をクンクンさせている。これは遊んでくれのサインだ。ローラは日曜日がわかる。日曜日に思う存分遊んであげないと翌週は何かいたずらをするのだ。
「P2、コーヒー作って!」
あら、P2の返事がない。
「P2、コーヒー沸かして~」
「あのね、P2はダンスしているよ!」
キャッツが嬉しそうに報告をした。
「えっ、ダンスって昨日の続き?」
恐る恐るリビングに顔を出した。すると、鏡を見ながら昨日みんなと踊ったダンスを思い出すように踊っているP2と、鏡越しに目が合った…

「Kaoluさん、おはようございます、早速コーヒーを煎れますね。」
P2は、少し残念そうにダンスを止めた。
「あ、ありがとうP2、ところでP2はダンスが趣味だったの?」
「いいえ、私は、昨日初めてダンスを踊りました。ダンスが趣味になるかどうかはわかりませんが、とても楽しいと思いました。」
(喋り方は以前のP2のままだわ)
コーヒーを飲みながら、今日はローラのボール遊びは大学のキャンパスでしようと決めた。
パパの研究室に行って、C3POの様子を見ないといけない。
「ローラ、大学公園に行くわよ!好きなボールを持って来なさい!」
ローラは尻尾を振りながら、自分のおもちゃ箱から最近お気に入りのサッカーボールを咥えてきた。
「僕もボール遊びする!」
兄弟の真似をするように、キャッツがローラのおもちゃ箱から小さめのボールを咥えた。
「キャッツは猫なんだから、日向で昼寝でもしたら?」
キャッツは、基本的に抱いてあげないと移動に時間が掛かる。イスタンブールから持ってきたポシェットに入るより抱かれる方が気持ち良いと学習をしてしまい、あのポシェットはお蔵入りだ。だから、Kaoluにとっては、連れて歩くのが大変なロボットなのだ。
「僕は猫じゃない!AIロボットだよ!僕も一緒に行く!P2も一緒に行こう~。」
これからは、人型ロボット一体、猫型ロボット一体、犬一匹…
私に一人になる時間ができるのかしら?
Kaoluは、このにぎやかな日曜日の始まりに少し不安になった。
【大学公園】
大学公園というのは、ローラ用語だ。キャンパスと言うと、ローラは喜ばないのだ。キャンパスというのは、Kaoluが勉強や研究をしに行くところだと理解をしているらしい。だから、ローラにとって楽しい場所である“公園”を付けて、ローラとボール遊びをする時は、キャンパスが大学公園に変わる。
大学公園にロボット2体と犬一匹を連れてやってきたKaoluは、そこにカエを連れたAllenを見つけた。どうやら、カエはここでダンスの復習をしているらしい。
「Allen、おはよう、カエ、ダンスの復習をしているの?」
Kaoluは。もう可笑しいやら楽しいやらで、なんだかワクワクしてきた。
「あっ、Kaolu、おはよう、ほら、うちはシェアルームだから日曜日にカエがダンスをすると迷惑だからね。それにC3POが気になってね。朝ごはんは外で食べた方が美味しいから、ここでコーヒーを飲んでいたんだ。」
「えっ、カエも家でダンスを踊ろうとしていたの?P2も朝からこっそり鏡の前でダンスを踊っていたのよ。」
ふと目をやると、カエとP2は一緒にダンスを踊っている、ローラはカエに遊んでもらいたくて、その間に割り込もうとピョンピョンしているのがなんとも可愛い。
そして、キャッツは…

子猫が基本設定アルゴリズムのキャッツなので、ボールを咥えたところまでは良いが、それから先はどうして良いのか分からないらしい。KaoluとAllenは、ボールを咥えて考え込んでいるキャッツを見て思わず笑いだした。
「キャッツ、ボールではなく猫じゃらし買ってあげようか?」
Kaoluは笑いながらキャッツに言ってみた。
「猫じゃらし…」
キャッツの頭脳が少し考えている。どうやら、猫じゃらしを知らないらしい。
「あっ、僕、猫じゃらしが欲しい!」
頭の片隅に、猫が好きなものの中から、猫じゃらしを見つけたらしい。
ローラのおもちゃ箱から勝手に持ち出したボールをカエのそばに置いて、キャッツは、昨日のオイル風呂でかなりスムーズになった歩行機能を発揮して、自力でKaoluとAllenのそばまでやって来た。

「キャッツ、ローラはカエに任せて、僕たちはKovalenko教授の研究室に行こう!」
Allenがキャッツを抱き上げて言った。
「やだ、僕、猫じゃらしが欲しい!」
「きっと、パパの研究室にあるわよ。」
Kaoluは、AIロボットとしてのキャッツの個性がほぼ掴めてきた。キャッツは、基本的にAI相互コミュニケーションを学習して、不服従行動が出来るかなり高度はAIロボットだが、性格の基本アルゴリズムは子猫なので、子猫アルゴリズムに刺さる事にはケロリと騙される。恐らく、この矛盾がキャッツの飽くなき魅力なのだと理解した。
「本当?パパは僕が好きなものを何でも知っているんだよ!Kaolu、行こう!」
KaoluとAllenは、笑いを堪えてキャッツに真面目に答えた。
「パパいるかな?きっとキャッツを待っているわよ。」
UCLAの日曜日はとても和やかで楽しい。

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