AIハンドラー 第11話

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【ダンスヒーリング治療】

「えっ、私、踊れない、AllenとカエとP2で踊ったら?もちろんキャッツもね!」
後ずさりながら、Kaoluは言った。
「ええ~、Kaolu、一緒に踊ろう!」
「そうだよ、運動不足はよくないよ」
「Kaoluさん、私も踊りますから、一緒に踊りましょう。」
(なんで、P2までこんなにノリノリなのよ~)

ここはAcimo Spaの3階、広々としたスタジオになっている。
スタジオの前方にはお立ち台が置いてあり、なんと、今日のダンスヒーリング治療のインストラクターは草AIロボットのレンくんだ!

レンくんはダンスに特化したAIロボットで、とにかくダンスが上手い。
5年前にUCLAの大学院を優秀な成績で卒業して、今はイギリス政府のAI研究所で働いている女性の置き土産ということで有名である。
レン君のダンスを見ようと、スタジオにはロボットと人間が半々ぐらいでギャラリーが集まっている。
「Allen、ダンスヒーリング治療って人間も受けるの?」
「Kaolu、踊ってごらん、嫌なことは忘れて愉快な気分になれるよ、レンくんは天才インストラクターだからね!」
準備体操に余念がないAllenは、嬉しそうに笑いながらKaoluを見つめた。

「皆さん、そろそろ始めます!準備体操は各自でしてくださいね。今日のダンスは懐メロですが、KポップのGoldenです!」
コマちゃんが、嬉しそうにアームをギシギシさせながら準備体操をしている。
(嘘でしょう?何、これ?)
Kaoluは、諦めて、かばんを後ろに置いて、真ん中でみんなに声を掛けてはしゃいでいるキャッツの横に渋々歩いて行った。

「さあ、皆さん、準備は良いですか?では、ミュージックスタート!!」
ジャーン~!

【ローラのおしっこポーズ】

ダンスが終わり、キャッツは、Allenに全体Tuningをして貰った後、一緒にオイル風呂エリアにやって来た。
「キャッツ、どのオイルが良いかな?」
「日本、韓国、アメリカ、イギリス、そうだ先週からタイのオイルも入っているよ。」
「Allen、なにが違うの?」
「再生機能は、バス(お風呂)が同じだから同じだよ。キャッツが良いな~と思う匂いを選んでごらん!」
キャッツは、一生懸命説明書を読んでいる。
「Allen、僕、片足をあげて、おしっこしたいんだ!」

「えっ?」
今までAIロボットから聞いたことがないセリフに、Allenは、一瞬手を止めた。
キャッツをまじまじと見つめる。
「僕ね、ローラみたいにおしっこしたい!」
「キャッツ、それは…」
思わずAllenは、言葉を失った。

「( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \、UCLA随一の優秀な大学院生のAllenも、お手上げかな?」
後ろから声が聞こえてきた。
そこには、Kovalenko教授が笑いながら立っていた。
「あの、教授、今までAIロボットから排泄行動については聞いたことがないのですが、キャッツは特別ですか?」
「いや、この子は、組み込まれた複数アルゴリズムや学習データから、3つ以上の事実を組み合わせて新しい思考を考えられるだけだよ。普通のAIは記憶と学習データの組合せが一般的だね。今、いよいよ人と寄り添うカンパニーとしてのAIロボットの実現可能性が問われている。カンパニーAIロボットには、生き物を自分なりに理解する思考がどうしても必要になる。キャッツには、その思考に必要なアルゴリズムである不服従判断、服従判断、融合創造思考を学習させているのだよ。」
Kovalenko教授は、キャッツを抱き上げて言った。
「キャッツ、キャッツはAIロボットだから、おしっこは出ないんだよ。その代わり、キャッツは産毛センサーを持っているだろう?そのセンサーは、キャッツの身体の中が熱くなりすぎたり、冷たくなりすぎたりするのを防ぐんだ。だから、産毛センサーは、ローラのおしっこと同じくらい大事なんだよ。」
Kovalenko教授は、Kovalenko教授の顔をしながらも、パパらしい声で優しく説明をしている。その横で、Allenは、今受けた衝撃から立ち直れないでいた。

「そうか、そうだよね、僕、ごはん食べないもんね。」
キャッツ自慢の長い尻尾が、シュンと倒れた。
「でもね、ローラのあの格好、カッコいいんだよ!だから、僕、あの恰好してみたい!」
Kovalenko教授は、今回は一瞬怯んだようだ。それを見て、Allenはホッとした。新しい概念を生み出すAIロボットの発想は、Kovalenko教授でも時には予測不能なようだ。

【C3POことArmie】

ダンスを踊ったロボットたちは楽しくて、しばらくAcimo Spaにいると言い張った。
「大丈夫だよ、Kaolu、スパの中は完全に安全だ。しばらく遊んでいてもらおう。」
急ぎ足でキャンパスを歩きながらAllenが言った。
「パパはいつ研究室に戻ったのかしら?ダンス踊らなかったから、シャワー浴びる必要もなかったしね…」
渋々ダンスを踊ったKaoluだったが、小学生の頃チアダンスを習っていたKaoluは、結局、誰よりもハッスルして踊ってしまった。そして…、Acimo Spaで人間用シャワーを使わせてもらった。

朝から大騒ぎして、散々遊んだりメンテンナンスをしたりしていたが、まだお昼過ぎだった。
いつの間にか研究室に戻ったらしいKovalenko教授からメッセージが入っていた。
「サンドイッチを用意しておくから研究室に来なさい。KaoluのC3POの分析が終わっているよ。」
「パパ~、じゃなくてKovalenko教授、Kaoluです。」
Kovalenko教授の研究室に入ると、正面にアナライザーから外したC3POが寝起きの子供のような顔で坐っていた。
「ちょうど良いタイミングで来たな。寝てばかりいるC3POがさっき自分で起きたよ。」

突然、C3POの目がかすかに点滅をした。
「私はC3POではありません、Armieです。」
全員が振り返った。
「今、自分から話した?!」

3人は、コーヒーを飲みながら、アナライザーが分析したログを読んでみた。

「言語機能はかなり使いこなせるみたい」
「身体機能は…、あまり使っていなかったようだな」
「目の視覚センサーは、内蔵されているAIがコントロールしている気配はないようだわ」
そして…
「記憶装置には、このロボットのオリジナルのではないLLMのログが入っているように見えるわ!」

「私はArmieです。」
何度も同じセリフと繰り返している。
「分かったよ、Armie、君はどこから来たのかな?」
「私は、C3POに憧れていました。」
「私…を必要~~とする…AI…ノート」
ガクン!
「まだ眠いのかしら?」

「Kaolu、Allen、私は2時から始まる教授会に行くよ。キャッツのAcimo Spaへのフリーパスを承認して貰わないとね。パスキー登録手続きの時に何をしでかしたのかな?
ハズウェル教授が、中央AIデータセンターへの出入りは絶対に認めない!と、今朝、私のところにメッセージを送って来ていたよ。」

ハズウェル教授…
Kaoluは、あの時の冷たい顔をしてキャッツを見つめていた教授の顔と、それを全く意に介さず登録センサーの前で踊っていたキャッツの姿を思い出して、また憂鬱になった。
「キャッツがね、登録センターのセンサーで踊ったのよ…」
「Kaolu、キャッツはショッピングモールの滑り台で尻尾センサーを故障させたと踏んでいるんだがね。…そろそろ、オイル風呂が終わった頃だな。」
Kovalenko教授は、時間を確認してから言った。
「セラピストアシモは優秀だ、キャッツの尻尾センサーは間違いなく治っている。そして、あの落ち着きのない挙動もかなりクールダウンしているはずだから、教授会が終わるタイミングを見計らって、キャッツをハズウェル教授の研究室に連れて行きなさい。大丈夫だよ、私がきちんと説明をしておく。確かにキャッツは子猫Behaviorを基本性格アルゴリズムとして入れ込んでいるが、あそこまではしゃぐのは一時的なものだ。考えてごらん。イスタンブールからロサンゼルスへ引っ越してきたんだ。普通の大人だって軽い躁状態になるだろう。」

では行くよと言って、Kovalenko教授は部屋を出て行った。
「Kaolu、言われてみればその通りだよ。僕だってアメリカ中西部の田舎のハミルトンからロサンゼルスに初めて出て来た時、安いホテルだったけど、うきうきして不味いハンバーガーを美味しいと思ったよ。このC3POは僕が詳細分析とボディチェックをしておくね。Kaoluはキャッツをハズウェル教授に見せてくればいい。」

(イスタンブールからロサンゼルスへの引っ越し…、言われてみればその通りだわ)
「ロサンゼルスは、私には故郷でもキャッツには初めての場所よね…。」
Kaoluは、AllenにC3POを任せて、一人でAcimo Spaに急いだ。

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