「ローラはなんで泣いているの?」
昨日は散々歩かされて、半べそをかいていたキャッツは、不思議そうにローラを見ていた。
「キャッツさん、ローラは年に2回予防接種をしなければいけないのです。五種混合接種は筋肉注射なのでかなり痛いということで、ローラは予防接種が大嫌いなんです。」
去年は、暴れまくるローラに投げ飛ばされたP2なので、精密機械が内蔵されているキャッツを守らなければいけないとしっかり抱えている。
「注射?注射…あ、あれを指すんだね!」
「ローラ、大丈夫だよ、データによると1.25秒で終わるから!」
観念したらしいローラは、恨めしそうな上目遣いでキャッツを見た。
キャッツがローラの気を引いている間に、獣医師は素早く注射を打った
キャンキャン!!!!
ローラは叫ぶような声で鳴き、その場にうずくまった。
「ローラ、終わったわよ!」
Kaoluに優しく声をかけられて、ローラは気絶したフリをやめた。スクっと起き上がり、けれどもしっかりと、獣医師から貰ったビーフジャーキーを食べ始めた。
「僕は予防接種はいらないの?」
その声を聞いて、獣医師が戻ってきた。
「おや、この子は、新しいロボットかな?ずいぶん可愛らしいロボットだな。名前はなんて言うのかな?」
「僕、キャッツだよ!猫じゃないよ、 AI相互コミュニケーションを優秀な成績で卒業したロボットなんだ!」
動物病院の玄関先で、虚ろな目つきでビーフジャーキーを食べるローラを尻目に、キャッツは、今日は元気だ。
「あのね、先生、僕、お兄ちゃんなの!」
キャッツがそういうのを聞いて、獣医師はニコニコしながら笑った。
薫とAllenはヘトヘトになって無言だった。
【再びArmie】
KaoluとAllenは、近くの公園でローラとキャッツをカエとP2に頼んで、公園の中の朝食レストランに行き、朝食を食べてようやく元気を取り戻した。
「Allen、ありがとう!今年は、引っ掛かれなかったわよね?」
昨年は、KaoluとP2はローラにぶっ飛ばされて、Allenはローラに引っ掛かれた。
そして、動物病院の後に、全員がUCLAの医務室で治療を受けたのだ。
「今年は上手くいったね。大丈夫だよ。さあ、大学院に行こう!Armieをなんとかしないとね。」
今日は、AllenはAcimo Spa監督のアルバイトの日だ。だから、ArmieもAcimo Spaに連れて行くことにしたのだ。
車でAcimo Spaの駐車場に着くと、そこで、Kuri教授がロボット達と談笑をしていた。
「あっ、Kuri教授だ!挨拶しないと!」
そう言うと、キャッツが車のドアが開くなり飛び出した。
「Kuri教授、おはようございます!昨日は、3桁九九のお勉強楽しかったです!」
KaoluとAllenは思わず顔を見合わせた。
Kuri教授に対するキャッツの対応は、まるでUCLAの新入生のようだ。
(どうしてこんなに素直に言うこと聞くのかしら?)
「Kaolu君、おはよう!キャッツ、おはよう!おっ、Allenも一緒かね?」
Kuri教授が、にこやかに言った。
「Kovalenko教授は、先にArmieをオイル風呂に連れて行ったよ。今日は私のロボットもオイル風呂に入りたいというから、Armieのメンテナンスを手伝おうと思ってね。」
Kuri教授はそう言って、研究室所属のAIロボットの肩を優しく叩いた。
P2と仲が良いロボットなので、P2がウキウキしているのが伝わってくる。
「さあ、行きましょう!」
全員、Acimo Spaの入口まで歩き始めた。
「Kaolu、僕の年間パスは?」
「キャッツ、首の後ろ側に回っているわよ!」
キャッツは、前足で器用にパスを首の前に持って行って、誇らしげに歩き始めた。
「やっぱり、Kaolu、抱っこがいいよ~」

キャッツは、頑張っても、普通の人の速さの半分以下でしか歩けない。Kaoluは急ごうと、ヒョイッとキャッツを抱き上げた。
「やっぱり、抱っこが好きだよ、僕」
嬉しそうに言うキャッツだった。
「ローラは完全にダウンしているから家に置いてきたけど、Armieは大丈夫かしら?」
一旦家に寄って、Kaoluはローラを家に置いてきた。ローラは、車から降りると、「これ以上一緒にいたら殺されそうだ!」と言うように、一目散にリビングの自分のベッドに倒れ込んで背中を見せて丸まった。
Acimo Spaの入口で、キャッツが、全然必要がない年間パスの入口タッチを何度もするのを尻目に、KaoluはArmieが気になってしかたない。
「Armieは既にオイル風呂のフロアにいるらしい。Kaolu、急いで行ってあげて。」
Allenは、監督者のウエアを着ると、Acimo Spaのスタッフであるセラピストアシモから監督用タブレットを受け取った。
「今日のオイル風呂は…、満員御礼だな!」
Kaoluがオイル風呂の部屋に入ると、Armieが振り向いた。
「あっ、Kaoluさんですね。おはようございます。」
Armieはとにかく礼儀正しい。かなり古いロボットなのにこんなに躾が出来ているなんて、どうしてなんだろう?と不思議に感じていた。
そこにKuri教授が自分のロボットを連れて入って来た。そして、後ろから、ちゃっかりP2も来ている。
「Kaoluさん、私もオイル風呂に入れることになりました!」
P2が嬉しそうに言うのを聞いて、Kaoluは笑った。
「僕もオイル風呂に入るんだよ!今日はね、ハワイのオイルにするんだ!」
張り切っているキャッツが遅れてやってきた。
「あれ?そのロボットは、この間パパの研究室にいた…スターウォーズのC3POだよね?」
キャッツはArmieを見ながら言った。
「私はC3POではありません。Armieと言います。初めてお会いしますが、貴方は?猫型ロボットですね?良かったら、お名前を教えてください。」
「僕、キャッツだよ!Armie、コピドラちゃんのお友達と同じ名前だね!」
キャッツが言うのを聞いて、Kuri教授は驚愕した。
「キャッツ、今、なんて言ったのかな?」
「はい、Kuri教授、Armieという名前は、伝説のAIであるコピドラちゃんのお友達と同じ名前なんです。」
何故か、キャッツはKuri教授には敬語を使う。そして、話しが脱線しない。
「伝説のAIであるコピドラちゃんのお友達…」
呟くように言うと、近くにいたセラピストアシモに声を掛けた。
「Kovalenko教授はAcimo Spaにいるのかね?いるのならば、呼んでくれないかな。」
真剣な顔でアシモロボットに言うKuri教授を見つめて、Kaoluは何故か不安を感じた。


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