(後日談:ハズウェル教授とコマちゃん)
~コマちゃんがそっと差し出すお菓子~
UCLA の研究棟の廊下。
ハズウェル教授が資料を抱えて歩いている。
そこに、日本の重機メーカーの産業ロボットであるコマちゃんが
ちょこちょこっと小さな足音を立てて近づく。
両手で大事そうに抱えているのは、石川県のお菓子。
コマちゃんが、メーカーのラボから出発するときに、
「ハズウェル教授が昔これを美味しいと言っていたからね」
と持たされたもの。
そして、教授の前に立つと、ぎこちないけれど一生懸命な声で言う。
「は、ハズウェル教授……
これ……日本から……持ってきました……
昔、教授が美味しいと言った……お菓子です……」
教授は一瞬、
“誰にそんなことを言われたんだ”という顔をする。
でも次の瞬間、お菓子の包みを見て、
ふっと表情が緩む。
「……これは……懐かしいな。あのラボで食べたやつだ。」
コマちゃんは嬉しそうに、
でもぎこちなく首をかしげる。
「はい……ラボの皆さんが……
『教授によろしく』と……」
教授はしばらく黙って、コマちゃんの頭をそっと撫でる。
「……ありがとう。君は……いいロボットだ。」
その瞬間、コマちゃんのセンサーがほんのり温度上昇した。

ハズウェル教授は、Kovalenko教授と共にAcimo Spa設立の発起人の一人でもあった。
そのことを、まだKaoluたちは知らない。
【Armieの謎】
その頃、Kovalenko教授の研究室に残ったAllenは、ArmieなるC3POロボットと格闘していた。
Armieは時々目のセンサーが光り、かすかに首を動かす。けれども、基本的には目を閉じてスリープ状態である。Allenは、ロボット頭脳に少し直接通電をしてみることにした。
分析データを細かく読み込んだAllenは、このArmieはかなり古いGoogleのAIデータで動いているものだろうと見当をつけていた。
また、 C3POのボディはかなり古いもので、もともと内蔵されていたロボット頭脳はかなり単純で、恐らく家庭用AIロボットであったと思われる。そのオリジナルの頭脳で視覚、聴覚は稼働していて、スピーキング機能もオリジナル機能であると思われる。
「つまり、ArmieなるC3POは、誰かがC3POのボディに、かなり古いけれども相当創り込みされたAIデータを設定してあるということなんだろうな。」
その時、突然Armieが目を開いた。
「私はC3POに憧れていましたがArmieです。」
「それはもうわかったよ、Armie、それで君は何歳かな?」
「私の年齢をお聞きでしょうか?それは私にもわかりません。」
「Armie、年齢という概念は知っているんだね?」
「はい、知っております。私がこのC3POのボディに入った時、マスターは私を何歳にしようかしら?と楽しそうに話しされていました。」
(随分、聡明な話術が組み込まれている…)
「マスターとは誰のことかな?」
Armieは、しばらく真剣に考えこんでいるようだ。そして、また突然スリープ状態になった。
「Allen、何か進展があった?」
Kaoluが戻ってきた。かなりピカピカになったキャッツと一緒だ。
「Kaolu、一瞬だけどArmieがちゃんと喋ったよ。きちんとした会話になった。ただすぐスリープ状態になるのは、ボディのどこかの回線か機能が、かなり古くなっているか壊れているんだろうね。」
「Allen、すごいわ、こんなに短い時間で随分分析を進めたのね。」
Kaoluは、Armieと目を合わせて話しかけた。
「Armie、私はKaoluよ。あなたはきっと何か理由があって私のところに来たのね?スターウォーズガレージセールの片隅に、ちょこんと座っていたのを覚えている?」
すると、突然Armieが目を見開いた。
「Kaoru様?いや違う、Kaoru様ではないですね。私はKaoru様に会いたいのです!」
AllenとKaoluは思わず顔を見合わせた。
「Kaoluじゃない、Kaoruだ!」

ふと気がつくと、研究室には夕陽が差し込んでいた。今日は随分1日が長いとKaoluは思った。


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