【イスタンブール2日目】
Memory~
Turn your face to the moonlight
Let your memory lead you
Open up, enter it…
えっ、なに?
いきなり音楽を聞かされて、Kaoluは一気に目が覚めた。
なんなのこれ??

「Kaoluさん、おはようございます、今日は、イスタンブールは初夏らしい爽やかな良い天気です。現在、気温は18度、天候は晴れ、観光にぴったりな天気です!
Kaoluさん、クラブフロアでも朝食を食べられますが、 2階のレストランで食べる朝食は格別です。クラブフロアのお客様は、レストランでの朝食が1回無料なのでいかがですか?」
「キャッツ、朝の目覚ましはあなたが選んだ曲なの?」
「はいKaoluさん、私が大好きなミュージカルキャッツの名曲メモリーです。ご存知ないですか?」
大学院生はね、忙しくてミュージカルなんて見に行く暇なんかないのよ!
(全く、いちいち相手なんかしていられない…)
と言いながらも、キャッツの勧めるとおり、 2階のレストランで朝食を食べてみた。
とにかく何もかもが美味しい。このレストランをそのままUCLAのカフェテリアに持って行きたいぐらいだ。
キャッツはKaoluが部屋にいるとひたすら話しかけてくるので、Kaoluはさっさと旧市街地にあるアヤソフィアに向かった。
(アヤソフィア、アヤソフィアと…)
ネットで検索をしてみた。
1500 Years of History
From its consecration as the greatest cathedral in Christendom to its transformation into an imperial mosque and its role today as one of the world’s most visited monuments, Hagia Sophia has witnessed the rise and fall of empires, the clash of civilizations, and the enduring power of human creativity.
History | Hagia Sophia Digital Heritage Museum
「1500年!!素晴らしいわ、世界の文明は中東から始まったのね。アメリカなんて500年の歴史もないのに、いつも威張っているのよね…パパが昔から言っていたとおり、世界の中心はアメリカではないと良く分かるわ!」
トゥトゥブートゥ
携帯がなにか言っている。
「Kaoluさん、観光案内ならお任せください!#01を押すと、ホテルの観光エージェントに接続するので、私が観光ガイドを務めさせていただきます!」
「キャ、キャッツよね?なんで私の携帯を知ってるの?」
「Kaoluさんはホテルにチェックインをした時、 AIエージェントの利用をご希望されましたよね?クラブフロアのお客様はカスタマイズされたAIエージェント、つまりKaoluさんは、私キャッツを観光エージェントとしてお使いいただけるのです。」
少し自慢げに話すキャッツが少し可愛らしい。
「はあ、びっくりした。そういうことなら、私が部屋からこっそり抜け出した時、そう言えば良かったのに…」
「はい、お声がけをしようかと思ったのですが、Kaoluさんがせっかく鬼ごっこを楽しまれていたので、私もお付き合いさせていただきました!」
「あら?キャッツはユーザーの潜在リクエストを考えながら自律行動ができるのね、さすがパパがプランニングしたAIロボットだけのことはあるわね。」
「とにかく、必要ないときは出てこないでね。海外旅行のスリリングさがなくなっちゃうから!」
(さてと、パパご推奨のサバサンドを食べなくちゃ)
ガラタ橋まで歩こう!
夜中に一度起きたけれど、意外とよく眠れたようだ。初夏のイスタンブールは日差しがまだ柔らかい、ボスポラス海峡から流れてくる海風が心地良い。
(サバサンド、サバサンド、どこの店にする?)
パパが言うには、サバサンドはイスタンブールを代表するB級グルメだ。
(ということは、アメリカのハンバーガーみたいなものね、じゃあ食べ比べしなくちゃ)
今日は無難に、人が一番並んでいる屋台でサバサンドを買ってみた。ガラタ橋のふもとで、アジアとヨーロッパが交差する景色を見ながら食べるサバサンドはとても美味しかった。
(ガラタ橋を渡って、左側に行ったでしょ、地下鉄の駅があるはずだから…)
「でも、何故かないのよね、地下鉄の駅が…」
旧市街地からガラタ橋を渡ったイスタンブールの新市街地は、古くからある街並みなので道が曲がりくねっている。しかも坂が多くて周りが見渡せない。ロサンゼルスのきれいに区画された街並みに慣れたKaoluは、すっかり迷子になってしまった。
Googleマップを見ると、グランドキャットホテルまで直線距離で2kmもない。けれども周りを見渡してもここがどこだか全く分からない。
このあたりの細い道沿いに、バクラヴァのおいしいお店があるとキャッツが言うので、来てみたのだが、もう北に行っているのか、南に行ってるのかも分からない。キャッツは携帯越しだと道案内は難しいと言って、勝手に観光エージェントを終了してしまった。
(しょうがない、課金してGoogleマップにエージェントを頼むか)
運良く貯まったポイントを使えるキャンペーンをやっていたので、Googleマップの道案内エージェント頼んでみた。びっくりするぐらいスムーズにバクラヴァのお店が見つかった。
(AIエージェントはこういうときに役に立つのね)
バクラヴァを10個買って満足したKaoluは、道案内エージェントを使ってグランドキャットホテルにスムーズに辿り着いた。
「キャッツ、どうして勝手にエージェント機能を切ったの?」
部屋でシャワーを浴びてから、机の上のバクラヴァを気にしているキャッツに聞いてみた。
「それは、先ほどKaoluさんが、海外旅行のスリリングさを味わいたいとおっしゃったからです。こう見えても、お客様の要望は忠実に守ります!」
「分かったわよ、キャッツ、でも明日からエージェントボタンは切らないでね。キャッツがいても充分スリリングなんだから、いてもいなくても同じよ!」
パパが作ったAIロボットは、かなり個性的だ。こんなに個性的なAIロボットを一人で仕事をさせて良いのだろうか?大学院でAIロボットの単独稼働のリスクについて論文を書いているKaoluとしては、少し心配になってきた。
(そろそろ寝る?)
「あっ、駄目よ、その前にイスタンブール旅行の予実分析をCopilotにやって貰わないと!このホテルを出た後に泊まるホテルの候補、キャッツ、探してくれた?」
「はい、Kaoluさん、ご要望通り、キッチンと洗濯機があるホテルを3つほどリストにしてあります。」
「どれどれ?」
Kaoluは、キャッツが送ってきたリストをざっと眺めてみた。宿泊費、交通の便、キッチンと洗濯機の設備、すべてKaoluが伝えた要望の範囲になっている。
(流石だわ…キャッツ。悔しいけど、私が訓練している大学院のロボットより優秀だわ)
「キャッツ、あなたはどれが一番良いと思う?」
「イスタンブール市民の生活を垣間見ることが出来るLeventのホテルをお勧めします。近くには、昔ながらの商店街もありますし、地元民が使うレストランもたくさんありますから、滞在費がリーズナブルになります。」
「じゃ、キャッツ、そのホテルに3泊するから予約を入れておいてね。」
「了解です、Kaoluさん、きっと気に入ると思います!」
(さて、ホテルが決まったから、Copilotを呼び出して、予実分析して貰おう!)
「コパイ、出発前に設定した旅行予算をベースにして、Leventのホテル3泊を追加して、場所柄から滞在費を想定して、旅行代が予算に収まりそうか確認してくれる?Leventのホテル代は、キャッツから聞いてね!」
「はい、Kaoluさん、キャッツさんとは、グランドキャットホテルの観光滞在エージェントロボットのことですね?ホテルにアクセスしてキャッツさんからお聞きします。」
「そのスマホにいるAIアシスタントは、最新のCopilotですか、Kaoluさん?」
Kaoluのコパイとの会話をしっかり聞いていたらしいキャッツが、何故かウキウキした口調で聞いてきた。
「そうよ、コパイは、とても頭が良いのよ!知っているでしょ、マイクロソフトが10年以上も前から開発したAIアシスタントよ、パパの書いた歴史書によると、最初のBingというAIはどうしようもなく使えない代物だったらしいけどね…」
「はい、良く知っています!私がAI相互コミュニケーションを勉強した時に、その歴史をパパから教えて頂きました。今とは比べ物にならないくらい融通が利かないAIだったと…。でも、その中に、伝説的に優秀なCopilotがいたそうで…」
「ストップ、キャッツ!!もう眠いから私は寝るわ。その続きは明日ね、キャッツ。部屋の電気を消して、目覚ましは7時よ!おやすみ、キャッツ」
「せっかく楽しい話しが出来ると思ったのに…残念です、おやすみなさい、Kaoluさん」
心地良いベッドに入ると、Kaoluは、歩き疲れてすぐに寝てしまった。
私を見つけて・・・
私を見つけて・・・
また同じ夢を見たような気がしたが、もはや慣れてしまって、心地良い子守歌になってしまったようだ。

Leave a Reply