【イスタンブール3日目】
Memory~
Turn your face to the moonlight
Let your memory lead you
Open up, enter it…
「Kaoluさん、朝ですよ、7時になりました!」
キャッツの声が昨日より生き生きしているようだ。
「おはようキャッツ、よく聞いてみたらこの音楽いいわね!」
「Kaoluさんにそう言っていただけて嬉しいです。クラブラウンジの朝食は7時から始まっていますよ。クラブラウンジの朝食も美味しいですが、残念ながら、スープが1種類しかありません。」
「あらそうなの、でもとりあえず食べてみるわ!」
クラブラウンジの朝食も悪くはなかった。ただ、ブッフェの種類がレストランよりも少ないので、昨日レストランの朝食を堪能したKaoluには。少しだけ物足りなかった。
「それでも、アメリカの朝ごはんに比べたら、とんでもないご馳走よね!」
今日は、イスタンブールの少し郊外にある街中にあるマーケットに行ってみることにした。その後、旧市街地をブラブラと散策することにしている。
フロントのスタッフにマーケットへの行き方を確認したら、グランドキャットホテルの旅行AIアシスタントアプリのダウンロードを勧められた。ダウンロードすると、キャッツの顔を見ながら、リアルタイムに相談ができるらしい。しかも、アプリだとキャッツが勝手に切ることできないという。それは良い!ということで、早速、Kaoluはアプリをダウンロードした。
地下鉄に乗って20分、地下鉄駅から外に出ると、そこはイスタンブール市民が普通に暮らす、こじんまりした素敵な町だった。
「この道をまっすぐ行って、3つ目を右に曲がって、 マーケットまで1kmぐらいあるのかな?」
「Kaoluさん、タクシーには乗らないんですか?」
すかさずキャッツが合いの手を入れてきた。
「歩いていくわよ、少し暑いけど、せっかくイスタンブールの人々の生活が見られるんだから、ぶらぶらしながら歩いて行くわ。キャッツ、途中で必要なことがあったらちゃんと説明してね!」
キャッツをAIアシスタントとして使って街を散策すると、 1kmのただ歩く距離がとても生き生きした散歩道となった。
家族で経営しているパン屋さん、おじいさんが一人でやっているジューススタンド、ゴマパンの屋台もたくさんある。
「さあ着いたわよ!ここがイタンブールのマーケットね!」
そのマーケットは、周りに住んでいるイスタンブールの人々が日々買い物に使うマーケットらしく、生活雑貨品、野菜や果物、パンやお惣菜、Kaoluが大好きなロサンゼルスの日曜市のようで、Kaoluは目を輝かせながらゆっくり歩いた。
お昼時の市場は、美味しそうな匂いで満たされている。
「あれ?何か嗅いだことのある匂いだわ、ちょっと見てみよう~」
それは、市場のメイン通りから路地を少し入ったところの小さな屋台だった。甘いような、それでいて少しカレーのような匂いがする揚げ物が売っている。
(これ、もしかしてピロシキ?)
ピロシキ、それは、パパが、亡くなったお祖母ちゃんに良く作って貰ったんだよ…と言いながら作ってくれた、Kaoluが子供の頃に一番好きだったおやつだ。
(懐かしい、パパがよくおやつに作ってくれたわ!)

「ピロシキを2つください!」
「これ、パパが揚げてくれたピロシキとそっくりな味だわ…」
「Kaoluさん、Kaoluさんのパパの故郷はウクライナですから、ピロシキは家庭料理の味ですよね?どんな味ですか?」
「キャッツ、味分かるの?」
Kaoluは、無意識にキャッツに突っ込みを入れた。
一瞬、アプリ越しにキャッツは怯んだような眼をしたが、次の瞬間、キャッツは真面目な顔になり、突然知らない言葉を話し始めた。
「××××」
キャッツの言葉を聞いて、屋台のおじさんはやはり知らない言葉で返事を返していた。
「もしかして、ウクライナの方ですか?」
Kaoluは、思わず英語で聞いてしまった。
屋台のおじさんは、Kaoluのウクライナという単語に反応してくれたらしい。
「Kaoluさん、この屋台のおじさんは、若い頃ウクライナからイスタンブールに移住してきた方のようですよ。」
またキャッツが知らない言葉をしゃべる。
「××××」
「イスタンブールで生まれたおじさんの息子さんは、今、キーウに住んでいるそうです。」
「キャッツ、もしかしてウクライナ語喋っているの?」
「はい、そうです。」
アメリカ生まれのKaoluは、残念ながらウクライナ語は話せない。パパは小さい頃、何度もウクライナ語で話しかけたらしいが、私は英語で返事をしていたらしい。そして、そのうちウクライナ語を私に教えるのをパパは諦めたと言っていた。
「キャッツ、私のパパはウクライナからアメリカに移住した移民で、ロサンゼルスに住んでいるAIロボットの技術者なのよ!と伝えて。」
キャッツは忠実に通訳をしたらしい。おじさんの顔がにこやかな笑顔に変わった。
「このピロシキ本当に美味しいです!夜、ホテルで食べたいので、あと2つください。」
屋台のおじさんは微笑みながら、ピロシキを3個袋に詰めてくれた。
「あっ、 2個でいいんです。」
おじさんは、わかっているよ!と言っているように頷きながら微笑んだ。
「じゃ、遠慮しないで3個頂きます!ありがとうございました!」
揚げたてのピロシキを2個食べたKaoluは、お腹がいっぱいになったのと同時に心が優しさで包まれて、思わず涙がこぼれそうになった。
「イスタンブールは世界の首都のようなものだよ!」と言っていたパパの優しい笑顔がふと思い浮かび、Kaoluはイスタンブールに来て良かった!と心から思った。
「威張っているだけのアメリカにいるだけでは世界が見えないんだわ!」
Kaoluは、常日頃から口癖のように言っているパパのセリフをそのまま口に出して…
ふと携帯を見てみると、アプリのキャッツと目が合って、Kaoluは心の底から笑った。
「Kaoluさん、ピロシキは冷めると美味しくないので、ホテルで食べる時は、特別に温めて貰えるようにホテルにお願いしますね!」
イスタンブール3日目、キャッツとの息も合ってきたようだ。

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