【グランドキャットホテル】
さすがに疲れたな…
イスタンブールの街は坂道が多い。睡眠シートのせいで眠れなかったKaoluには辛い。
スーツケースは、イスタンブール空港からタクシム広場まで乗ったエアバスのスタッフがホテルまで届けてくれるらしい。
エアバスは航空機製造会社ではなく、Kaoluのパパが開発メンバーの主任を務めたトルコ政府イチオシのプロジェクトによる空飛ぶバスだ。
イスタンブール空港は世界一巨大な空港で便利だけれど、イスタンブール市内に出るのは遠い。だからエアバスの出番となったと聞いている。
もちろん、本来ならKaoluのような大学院生が乗れるものではない。
今回は特別パパから無料乗車券をもらった。
でもさ、私が頼んだわけではないんだよね…
パパはどうしても私にエアバスに乗ってもらいたかったらしい。
スーツケースもう届いてるかな?
グランドキャットホテル、可愛い名前だから小さなホテルかと思ったらかなり由緒正しいホテルみたい。
パパは、ローラ以外の犬には意外と冷淡なのに猫は大好きだからなあ…
「あのう、今日から3泊の予定で予約が入っているはずのKaoluです。」
「Kaolu様、ようこそイスタンブールへ、お父様からよろしく頼まれております。今回は特別にクラブフロアの部屋をご用意しております。」
「えっ、あの普通の部屋でいいんですけど…」
「お気になさらずに。お父様には大変お世話になりましたから。」
「スーツケースと小さなポシェットがこちらに届きましたのでお部屋に入れておきました。何か必要なことがありましたら、ご遠慮なくおっしゃってくださいね。」
小さなポシェット?
なんだろう、それ?
「お部屋番号は3521です。」
「お一人で行かれますか?」
「あ、荷物少ないから大丈夫です、ありがとうございます!」
「お部屋で楽しんでくださいね!」
(えっ、お部屋で何を楽しむの?)
3521、 3521、こっちかな…
あ、ここ
(ドアを開けたらイスタンブールの街並みが綺麗に見えるのかな、ウフフ)
さてさて…

「Kaolu様ようこそイスタンブールへ、早速ですが外の景色をご覧になられますか?」
「キャ~、誰~!!!」
「私は、グランドキャットホテルクラブフロア専属のキャッツです。私はクラブフロアに宿泊しているお客様に、お部屋のご案内やホテルのご案内、そしてご希望であれば、イスタンブール観光のお手伝いをさせていただきます。」
「もしお部屋についてご説明が必要であれば、私をお持ちになりお部屋の中を歩いてください。私がお部屋の使い方をご案内させていただきます。もしイスタンブール観光のサポートが必要であれば、何でもおっしゃってください。私は、外部AIと友好な関係でお話をするトレーニングを受けております。ですからKaolu様のお手を煩わすことなく、Kaolu様が必要な情報をお取り寄せいたします。」
「Kaolu様、現在私は英語でしゃべっておりますが、このままでよろしいでしょうか?忘れておりましたが、お父様からよろしくとのことです。」
なんなのこれ…
Kaoluは疲れも眠気も一気に吹き飛んだ。
(もしかしてパパ、このやたらお喋りな案内ロボットを開発したの?だからホテルの人はお世話になっておりますとか言っちゃってるわけね)
「あ、キャッツね、つまりあなたはAI相互コミュニケーションを終了した優秀なロボットっていうわけね。パパが設計したんだったら、きっと優秀なんでしょうね。」
「では、改めて自己紹介するわ、私はKaolu、あなたを生み出したパパの一人娘よ。イスタンブールにはしばらく滞在するつもりなの、でも私はそんなにお金持ってないから、この高級ホテルに泊まるのはたったの3泊よ。だからその3泊の間に、イスタンブールのこと効率よく教えてね、あっ、博物館とか見学予約したいんだけど、あなたがしてくれるの?」
「かしこまりましたKaolu様、 3日間でKaolu様が満足されるサービスをご提供させていただきます。わたくしはAI相互コミュニケーションを優秀な成績で卒業して、現在はSuper Copilot20マルチバージョンで動いております、ですから安心してお任せてください。お父様から、Kaolu様はAIロボットの評価が厳しいとお聞きしておりますので最善を尽くします。」
「Kaolu様、私はこのあたりでスリープモードに入ります、シャワーなど浴びてゆっくりしてください。ご用があれば名前を読んでください、自動で起動致します。」
(かなりお喋りなロボットね…)
「とりあえずシャワーでも浴びようかな、キャッツは勝手に私の裸を見ないわよね?」
(ま、見られてもロボットだしね、気にしない気にしない)。
ああ、さっぱりした、さすがクラブフロアだわ、湯加減は最高だしシャワーの圧力は完璧!
このままこのホテルにずっと泊まりたいな~
さて、クラブフロアということは…もしかして夕食無料なんじゃない!!
なんて素敵なの~
とりあえず夕食を食べに行こう、お腹一杯になってから、これからのことを考えよう。
ああ、お腹いっぱい…
トルコは、食事が美味しいとは聞いたけど、どこに行ってもこんなに美味しいかしら?
こんなご飯が毎日ただで食べられるなんて、なんて素敵なんだろう!!
「Kaolu様、お食事は楽しめましたか?早速ですが、Kaolu様がお食事に行かれている間に、入館予約が必要な博物館や宮殿、モスクなどをリフトアップ致しました。長時間フライトと時差ボケでお疲れかと思いますが、おそらく明日は時差ボケで早く起きてしまうかと思われますので、午前中にどちらに行かれませんか?お勧めは、アヤソフィアか地下宮殿です。
どちらも午前中ならばゆっくり見学できますよ。」
「キャッツ、私、バクラヴァを3つも食べちゃった!生まれて初めて食べたけど、アメリカのケーキより全然おいしいのよ。」
(キージージー、どうやらサーバーを読みに行ったらしい)「Kaolu様、当ホテルにお泊まりになるお客様はバクラヴァを食べ過ぎる傾向があります、けれどもカロリーがかなり高いのでお気をつけください。」
「わかってるって、キャッツ、でも3日間ならいいじゃない?」
「昔、私の先輩から、バクラヴァを食べ過ぎて、帰国してからパニックになった女性の話を聞いたことがあります。Kaolu様、お気をつけください。」
(ロボットにも先輩がいるのね…大学院にいるロボット達は、みんな自分が一番だと思っているから先輩なんていう概念ないんじゃないのかな?やっぱり働いているAIロボットは競争が厳しいのね…)
「キャッツ、あなたは働き者なのね。もうお腹いっぱいだし眠いし、パパが作ったロボットだから基本的には信用しているわ。あなたが良いと思う方を予約しておいて…」
なんか眠くなってきちゃった…どうせ時差ボケになるなら、もう寝ちゃおう!
Kaolu、私を探して、Kaolu、私を探して…
Kaoluは、ハッとして目を覚ました。
またこの夢なの、睡眠シートのせいじゃなかったの、何だろうこれ?
そうだ、忘れてたポシェットよ、きっとあの中に何かヒントが隠されているんじゃない?
もしかしたら、パパが睡眠シートにまで手を回したのかもしれない!!
あれ?ポシェットはどこ⁈
どこに行ったんだ、どこ!どこ!どこ!
「Kaolu様、ソファーの裏側に落ちますよ!」
「誰よ!あっ、キャッツね(だんだん慣れてきたわ、この環境)」
「ありがとう、キャッツ」
さて…パパの陰謀が分かるかな?
ポシェットは軽い、何かカードが入っているようだ。
Kaoluの推測どおり、一枚の特製ギフトカードが入っていた。
あらっ、ゴールドだからきっとたくさんお金が入ってるんだわ、パパったら照れちゃって。
直接渡せばいいのに…
Kaoluはカードを携帯に繋げて、まずはメッセージを聞いてみた。
『Kaolu、パパだよ、ターキッシュエアラインの睡眠シートは気持ち良かったかい?
初めての海外旅行、思う存分楽しむんだよ。
ところで、パパは、ママが出発する直前、Kaoluへのお小遣いを預かったんだ。
Kaoluがいつの日か海外旅行に行く時、Kaoluに渡して欲しいとね。
ママが若い頃アルバイトで貯めたへそくりだと言っていたよ。
ママは、本当は直接Kaoluに渡したかったと思う。
その気持ちを汲んで大切に使いなさい。
いつもKaoluの味方だよ、パパより』
ママ…
Kaoluはふと思い出した、あの出発の日、Kaoluは拗ねてママを抱きしめなかった。
ママは、すこし寂しそうな顔で、「Kaolu、元気でね、必ずまた会いましょうね」と言った。
(ママ…私、まだ少し怒ってるけど、とりあえずお小遣いありがとう!!)
Kaoluは無意識に目尻に手をやった。知らない間に涙が滲み出ていたらしい。
ママ、ママが絶対に行きなさい!と言ったイスタンブールに来たよ…
Kaoluは知らない間にまた寝てしまったようだ。

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