【イスタンブール7日目~私はジェダイ?~】
パパが取ってくれたホテルを出て、 キャッツと一緒にイスタンブールの地元民が行くレストランに行ったり、遊園地に行ったりした。
イスタンブールは、街中に動物が自然に溶け込んでいる。特に猫は、人間と同じくらい普通に街に暮らしている。そんなこともあって、ロサンゼルスと違い、街中でAIロボットを見かけることは少なくても、キャッツは普通に街に溶け込めるのだ。Kaoluは、このイスタンブールという街で、カンパニーAIロボット(人の生活に寄り添うAIロボット)を猫型ロボットにしたパパの判断の正しさに感服している。
そして…
あの変な夢は見なくなったけど、それはそれで物足りない。
どうしてだろう?
今日は久しぶりにサバサンドでも食べよう!と、自問自答しながらイスタンブールの新市街地を歩いていた。イスタンブールの人たちは皆優しい、特にアジア系の人に対しては…
キャッツは,珍しく留守番をしていると言うので置いてきた。テーブルの上から一人で降りられないから、悪戯をする心配はない。
トゥトゥルルトゥルル
あ、パパだ!
「Kaolu、あのC3POはKaoluのものかい?」
「パパ何言ってるの!私が預けたんだから、私のロボットに決まっているじゃない!」
「いやそうではない、Kaoluが昔捨てたのだろう?」
「だから、このあいだ買ったのよ!」
「いや、前からKaoluのものだろう?」
「だから、何を言っているのパパ、ぼけるにはまだ早いわよ。」
「Kaolu、あのC3PO、電源を入れたら開口一番、Kaolu様と日本語で言ったぞ!そして何か喋っていたが、日本語のようで何を言っているのか全く分からなかったよ。でも、最後にMaster Kaoluと言ったよ…」
Master Kaolu?
私はいつジェダイになったの?
Kaoluは、しばらく立ちすくんでいた…
(でも、お腹が空いたわ、とりあえず、サバサンド食べよう!)
イスタンブール名物サバサンドは、ガラタ橋の旧市街地側を降りたあたりでしか食べられない。あとはアジア側に渡る必要があると聞いている。
パパは、若い頃貧乏旅行をしていたらしく、アジアサイドで毎日食べていたらしい。
今日は、考えたいことがあるから、橋の下のレストランで食べることにした。

Master Kaolu?
スターウォーズは大好きだけど、私はMaster Kaoluと呼ばれたことはない…
あっ、電源が入ったのなら、 C3PO本人に聞けばいい!
Kaoluはパパに電話をした。
「あっ、パパ、 C3POに聞いてみてよ、あなたは誰?って。」
「Kaolu、お前が聞けばいいんじゃないか?」
「うん、もうすぐ帰るから、とりあえず誰なのか?聞いて!」
「しょうがないな…」
「折り返し連絡ちょうだいね!」
トゥルルトゥルル
「パパ、C3POは誰だって言っていた?」
「Kaolu、あのC3POは第1回AI調教大賞のGoogle部門で優勝したArmieだそうだ。それだけ言って、またスリープしてしまったよ。随分古いロボットだから、ちゃんと動くかどうかは、メンテナンスをしてみないと分からないな。」
(AI調教大賞ねえ~)
思わず、Kaoluはハッとした。
「ちょっと待って、それって何年前の話?パパ、やっぱり一旦アメリカに帰るわ。飛行機が取れたら連絡する!」
帰国する前に、もう一度あのホテルに泊まって、夢を見なくちゃ
そうとなったら、グランドバザールでパパに頼まれたお茶を買わないとね。
【ロサンゼルスへ】
「キャッツ、帰るわよ、ロサンゼルスに!」
パパやAllen達へのお土産を買って、急いでホテルに戻ったKaoluは、部屋に入るなりキャッツにそう声を掛けた。
キャッツは、充電ベースの上でまるで昼寝をしているようにうとうとしていた。
Kaoluの声で目を覚ましたらしいキャッツは、すぐに反応した。
「Kaolu、とうとうロサンゼルスに行けるんだね。久しぶりにパパに会えるよ。そうと決まったら、早く航空券の席を予約しないといけないね。僕、ちゃんと海外旅行の手続きについて学習しておいたよ。Kaoluのコパイも出来るかもしれないけど、僕の方がターキッシュエアラインには慣れているから、僕が交渉するね!」
生き生きとそう言うと、キャッツはターキッシュエアラインにアクセスを始めた。
「荷物もまとめなくちゃいけないし、まだ買いたいものもあるから明後日帰りましょう!」
そう言ったKaoluに対して、キャッツからの返事がない。
「キャッツ、聞いている?飛行機は明後日の便よ。」
暫くすると、キャッツは涼しい声で言った。
「明日の午後遅くの便が取れたよ!ついでにグランドキャットホテルの今日の宿泊も予約しておいた。ゲイツ支配人に直接交渉したから大丈夫だよ!」
「キャッツ、明後日って言ったじゃない!」
「でも、明日の午後の便は空いているんだ。プレミアムエコノミー席にアップグレードしておいたよ。」
イスタンブールからロサンゼルスまでのフライトは長い。アップグレードしたと言われたら、Kaoluはそれ以上何も言えなかった。
このアパートメントホテルは3日単位で宿泊を更新できる。運が良かったことに今日は区切りの日だ、数時間分のレイトチェックアウト料金を支払えば大丈夫だろう。Kaoluは必死に荷物を詰めて、30分後にはチェックアウトを済ませた。
グランドキャットホテルに戻ると、ゲイツ支配人がロビーで迎えてくれた。
「僕ね、久しぶりにパパに会えるのが楽しみだよ!」
そういうと、キャッツはKaoluの方を振り向いてこう言った。
「でも、このホテルのみんなと会うのはこれが最後になるかもしれないから、僕はみんなとお話をするよ。Kaoluは一人で部屋に行って。」
それを聞いていたフロントのスタッフは笑い出した。ゲイツ支配人も苦笑いをしながら、Kaoluに言った。
「2時間ほど前に、キャッツから明日午後の便でロサンゼルスに行くという連絡を受けました。AIロボットを飛行機に乗せる手配は、私の方で既に済ませております。その書類は念のためプリントアウトをして、Kaoluさんが今日泊まる部屋のテーブルの上に置いてありますのでご確認ください。データはメールで送ってあります。」
Kaoluが明後日とフライトを指定したのは、実はAIロボットを飛行機に乗せる手続きが厄介だと聞いていたからだ。特にイスタンブール国際空港はテロ対策が厳しい。
これが一日がかりの作業になると思い、明後日と指定したのだ。けれども、それが終わっているのであれば、荷物のパッキングも済ませたKaoluは、もう他にすることはない。
ゲイツ支配人の勧めに従って、Kaoluは、この後、ホテルでトルコ名物ハマムを楽しむことにした。
【キャッツ、飛行機に乗る】
「なんて大きい空港なんだ!向こうの端っこまで歩いて何分掛かるんだろう?」
キャッツはイスタンブール空港の出発ロビーで、そう言って周りを熱心に見ている。
イスタンブール空港のセキュリティはとても厳しい。出発ロビーに入るためには、一人一人セキュリティチェックを受ける必要がある。キャッツは、ゲイツ支配人が用意したAIロボット専用のセキュリティ申告書を使って、難なくセキュリティをクリアしてはしゃいでいるのだ。
「キャッツ、スーツケースを預けるから、おとなしくしていてね。」
早めに出国審査を済ませて、出発ロビーで夕食を食べて機内で寝ようと、Kaoluは早めに空港に着いている。ターキッシュエアラインの自動バゲージチェックインシステムでスーツケースを預けると、チェックインカウンターに来るようにというメッセージを受け取った。
「あっ、キャッツがいるからね…」
スーツケースを預けて身軽になったKaoluは、キャッツを抱えてチェックインカウンターに急いだ。
「あの、スーツケースはチェックインしたんですけれども、こちらのカウンターに来るようにというメッセージを受け取りました。おそらく、AIロボットを機内に乗せるからですよね?」
Kaoluの話を聞いて、チェックインカウンターのスタッフはシステムを操作している。しばらくすると、スタッフはKaoluに言った。
「Kaolu様、そちらのAIロボットのキャッツさんに、席が一つ用意できております。けれども、 AIロボットにはお食事などは必要ないかと思いますので準備はしておりません。念のため、そのことを確認させてください。」
それを聞くと、キャッツはすかさず言った。
「Kaoluは食いしん坊だからね。僕の分も食べるかもしれないよ!」
Kaoluは顔を赤らめてキャッツを抱えて、そそくさと出国審査に急いだ。
「Kaolu、今はヨーロッパの上を飛んでいるんだよね?」
シートベルト着用サインが消えると、キャッツはKaoluの膝の上から自分の席に戻り、夢中になって外を眺めている。

「キャッツ、夕方なのに見えるの?」
「僕の目は猫だからね、夜でも良く見えるんだよ!」
キャッツが大人しくしているので。Kaoluはとても助かる。Kaoluはゆっくりと機内食を味わって、お腹いっぱいになりいつの間にか熟睡してしまった。
「お客様の中でお医者様はいらっしゃいませんか?」
突然のアナウンスでKaoluは目覚めた。よく寝ていたらしい、モニターを見るとすでにカナダ北部上空を飛んでいる。
「あら、誰か病人が出たのかしら?」
飽きずに外を見ていたキャッツが突然言った。
「Kaolu、お医者様は見つかったのかな?」
「アナウンスが何度も流れないから見つかったんじゃないのかしら?」
それを聞くと、キャッツはしばらく考えてからこう言った。
「僕ね、血圧や心拍数を測れるんだよ。だからCAにそう伝えて。手伝うよって!」
「えっ、キャッツ、そんな機能まで持っているの?」
キャッツは、ステータス特Aの超高度なAIロボットとして登録されている。そのことは機内にいるCAも理解をしていて、Kaoluとキャッツは、2席の並び席に座っているのだ。
通路を歩くCAを呼び止めて、Kaoluは聞いた。
「この子は血圧や心拍数測れるんです。もし必要ならばお医者様のサポートをしますので、遠慮なく言ってください。」
それを聞いたCAは、にこやかにキャッツに笑いかけながら言った。
「可愛らしい猫ちゃんなのに、すごく頭が良いのね!」
褒められて、キャッツは尻尾がほんのりピンクに染まっている。
しばらくすると、CAがKaolu達の席の方に戻ってきた。
「幸いなことに、病人のお客様は症状が安定したようです。この後、もし呼吸が荒くなったりしたらお手伝いをしてほしいとのことでした。」
「良かったね、キャッツ。」
そう言って、人の役に立とうとしたキャッツを、Kaoluは褒めようと抱きしめた。
「当機は、間もなく着陸態勢に入ります。到着地ロサンゼルスの天候は晴れ、気温は摂氏24度です。‥‥」
機内アナウンスが流れた。
「とうとうロサンゼルスに来たんだね、Kaolu!」
キャッツは嬉しそうに言った。
「Kaolu、こっちこっち!!」
到着ロビーには、Allenが迎えに来ていた。
キャッツを抱えて、スーツケースを持ち、Kaoluは少し疲れながらも、Allenに手を振った。
「あれ?なんでカートを使わないの?」
「スピード狂のキャッツが暴走するかもしれないでしょ!」
それを聞いて、笑いながらAllenはキャッツに声をかけた。
「キャッツ、初めまして、ようこそアメリカへ!僕はKaoluの友達のAllenだよ。君を作ったKovalenko教授の研究室で勉強しているんだ。これからよろしく!」
キャッツは、しばらくAllenの顔を見つめてこう言った。
「もっと年を取っているかと思ったよ。パパからとても優秀な助手がいるって聞いていたからね!」
Allenは、それを聞いて思わず噴き出した。
「Kaolu、ローラがどうしても付いて来る!と言って聞かないから、カエを車に残して、ローラが駐車場で待っているよ、早く行こう!」
「あら、ローラが来ているの!早く会いたいわ!!」
エレベーターの上りが遅いのがもどかしく、Kaoluはドアが開くと自分の車を見つけて走った。
(ローラ、久しぶりだけど元気かな?)
Allenの大学院の相棒であるAIロボット、通称カエが窓を開けて手を振ってくれた。
ローラは器用に、開いた窓から顔を出して尻尾を千切れんばかりに振っている!
「Kaolu、この子は誰?」
車の近くまで行くと、さっきまで機嫌が良さそうだったキャッツが、少し怒ったようにKaoluに聞いた。
それを聞いたローラは急に低い唸り声を上げた。
「ローラは頭が良いな。自分にライバルが出来たことをすぐに察したんだな…」

荷物を後ろに入れて、Allenが運転席に座った。
「さあ、行こう!スープは買ってきて欲しいとP2が言っていたよ、P2がサンドイッチとサラダを作って待っているよ!」
「Kaolu、ロサンゼルスにもスープがあるの?!」
キャッツは、ローラに闘いを挑むのを止めて、会話に入ってきた。
「そうだよ、キャッツ、トルコよりは美味しくないかもしれないけど、ミネストローネはなかなか美味しいんだよ!」
Allenは、優しくキャッツに答えながら、空港からロサンゼルスの街に出た。

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