日本は、今や世界有数の現金決済大国だ。
しかし、先日ネットで世界の主たる国々の決済手段についてリサーチをした結果を見たが、実はドイツも日本と同じくらい現金決済が多いそうだ。6月に欧州に行く時に、なんとか時間を見つけてドイツに行くことが出来ないか思案中である。
新聞やネットで、#日本、#現金決済とタグ付けをしたら、どれだけの記事が引っ掛かって来るのか?そっちの方が興味をそそられるくらいだ。
昨年11月、程よくキャッシュレスが進んでいるシンガポールに1年ぶりに行ってきた。
シンガポールは、空港で飛行機がゲートについてから、市内中心部のホテルにチェックインするまで、運が良ければ1時間ぐらいしか掛からない。リゾート気分も買い物も楽しめて、ついでに世界中の料理が楽しめるので、似たような条件が揃っているが、私は個人的に香港よりもシンガポールの方が好きだ。
さて、そのシンガポールでも確実にCashlessは進んでいる。
一般の人にはあまり知られていないことかもしれないが、ほぼすべてのカードブランドのアジアパシフィックのHeadはシンガポールにある。当然と言えば当然である。
日本並みに便利な地下鉄には、もはやシングルチケット(いわゆる切符)はない。
スタンダードチケットと呼ばれる6回まで使えるカードチケットか、ez-Linkと呼ばれている日本のPasmoのようなICカードを使うか、二者択一である。
そして、日本人による日本語のシンガポール観光サイトにおいては、ほぼ全部のサイトにおいて、「ez-Linkは、5ドルのデポジットが掛かり、最低チャージ額が10ドルなので、観光客にはスタンダードチケットでOKです(実際は最初の購入の時は5ドルのデポジットと7ドルの運賃相当分の合計12ドルで購入することになる)」と書いてある。
シンガポールには数えきれないほど行っていることもあり、移動経路はほとんど頭に入っているので、たいてい地下鉄を使っている。そして、最初の2回は、観光サイトや観光ブログに書いてある通り、スタンダードチケットを買い、毎回乗る度にそのカードに1回分の運賃をチャージして乗っていた。
しかし!!
これ、本当に便利と言えるのだろうか?ふと疑問がよぎった。
シンガポールのチケット販売機は、イギリス式だ。つまり、行き先を押して掲示された金額を支払う。小銭もお札も使えるが、郊外に行かない観光客の行動範囲ではせいぜい2ドルから3ドル程度であり2ドルを切ることも多い。使い慣れていない小銭を使わないと、どんどん小銭が溜まっていく。
そして、地下鉄の駅でよくよく調べてみると(→単に説明の看板を読んだだけであるが…)、ez-Linkを使った場合の方が、運賃が圧倒的に安い!!
どれだけ安いか、全体像は分からないが(→全部読む時間がなかった…)、少なくとも、スタンダードチケットで1.5ドルするところが、0.6ドルぐらいしかしないのである!!
おおよそ半額か、それ以下である。
なによりも、地下鉄に乗る度に、そう多くないチケット販売機を探す必要もない。シンガポールでは、自動販売機の数は日本の半分以下しかない、いや、もっと少ないかもしれない。
それを探して、並んで、行き先を見つけてお金を入れる…
これを毎回行うストレスと所要時間を加味しても、5ドルのデポジットを取られるから、損だと言えるのだろうか?
もし、運賃がおよそ半分だとしたら、10ドル分の運賃を支払えば元が取れることになる。
だいたい、損か得かを額面通り支払う金額だけで考えるのは正しくない(と私は思っている)。
Time is Moneyである(特に時間が限られた旅行中)。
限られた時間を有効に使いたい観光客にとって、毎回地下鉄に乗る度に5分から10分ぐらいチケットに1回分の運賃をチャージする手間と時間をお金に換算したら幾らだと考えるか?
何回地下鉄に乗るかによって違ってくるとは思うが、私はその時間は1回あたり3ドルぐらいの手間に感じる。もし3ドルであれば2回地下鉄に乗れば元が取れるわけである。
日本のように、切符の自動販売機が、切符を買うのにほとんど並ぶことがないほど並んでいる国はないと思う。自動販売機を使う回数を減らせば、自動販売機の台数も減らせる。交通カードの導入は、そのような固定費を減らす効果も前提となっているはずである。
言い方を変えれば、毎回自動販売機を使うスタンダードチケットを使うお客様の運賃は高いですよ!!ということである。このロジックは、運賃の高さにおいては群を抜いて悪名高きロンドンの地下鉄も採用しているものである。つまりは、毎回自動販売機を使う人からは高い運賃を取るのである。
日本も、消費税が8%になった時、とうとう、切符とICカードの運賃に差が出来たということが話題になった。
しかし、差があると言っても、数円の違いである。
調べてみると、シンガポールだけではなく、たいていの国でデポジット(またはカード代)を取られる交通カードを使う運賃と、切符又はシンガポールのようなスタンダードカードを使う場合の運賃の差は大きい。それは、自動販売機を使う回数や、駅係員が対応する時間が多い人から多く料金を取っているというロジックであると思う。
つまり、インフラをより使う人は高い料金を払ってくださいね!(⇒だから大抵の国では地下鉄などは1回頃に買う切符運賃の方が圧倒的に高い)という、きわめて経済ロジックに沿った価格体系になっているということなのである。
日本においてキャッシュレス化が進まない理由は色々あるが、その一つの大きな理由は、現金で払っても損をすることがほとんどないからだと思う。
お店や公共機関で現金を使われるコストというものの認識が弱いのだと思う。
アメリカでもし100ドル札を使って買い物をしようものなら、目の前で偽札チェックをされる。場合によってはあからさまに嫌な顔をされることもある。私は一度100ドル札を拒否されたことがあった、それもかなり高級なショップで単価がそこそこするコスメショップである!!
日本では現金を大量に使っても、怪しい人だと疑われて嫌な気分にされることもほとんどない。
現金を使い続けることにより社会全体が負担しているインフラコストを考えた価格体系というものが日本には浸透していないことが、日本のキャッシュレスが進まない大きな理由に思うのである。