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ニューヨークはアメリカにあらず…
皆さん、こんにちは!
前回に引き続き、映画「ハミングバード・プロジェクト」について書いてみたいと思います。
前回のブログ
あのジェシーが帰ってきた!! 『ハミングバード・プロジェクト-0.001秒の男たち-』
『ニューヨークはね、アメリカではないんだよ。ニューヨークはニューヨーク。アメリカは広大な田舎さ!』
昔、ニューヨークに向かう飛行機の中で、隣に座って意気投合して話しをしていたビジネスマンが別れ際に言ったこのセリフを、私は後々仕事でたびたび痛感することになります。
ニューヨークは、世界中から観光客が集まるだけではなく、アメリカ人がたくさん観光客として来ています。彼らは、タイムズスクエアで写真を撮りまくり、ヤンキースの帽子をかぶって、私達日本人と同じようにニューヨークという観光地を楽しんでいます。
では、ニューヨークに観光に来る多くのアメリカ人が住んでいるアメリカという国の普通の街はどんな感じなの?と考えるようになったのは、飛行機の中で私に、『田舎なアメリカ』を教えてくれたビジネスマンのお陰です。
田舎なアメリカとは?
映画「ハミングバード・プロジェクト」を観ると、その『田舎なアメリカ』をたっぷり見せてくれます。
(映画のシーンより)
専用線を引く予定のカンザスからニューヨーク間は約1600㎞。
その間をとにかく最短距離にするために直線に拘ります。
そのやり取りの場面はかなりコミカルで、思わず笑いを誘われますが、その後、地下に専用線を通すために多くの地主たちと交渉をする場面では、その『田舎なアメリカ』をリアリティに表現しています。『田舎なアメリカ』とは、すなわち保守的な白人たちの価値観が浸透しているという事を意味します。
この映画では、ヴィンセントのプロジェクトにはいわゆるWASP(ホワイト・アングロ-サクソン・プロテスタント(英語: White Anglo-Saxon Protestant)はいません。
けれども、カンザスとニューヨークの間にある町には、誇り高き白人の中の白人を自負している人たちが出て来ます。地主の一人もそのような白人で、土地買収の交渉に来たヴィンセントの仲間の中南米系アメリカ人に、「君はどこの出身かね?」と冷たく聞いてきます。ヴィンセントは、すかさず、交渉を自分で行うのです。彼はロシア系アメリカ人ですが、少なくとも中南米系アメリカ人(いわゆるヒスパニック系)よりも、白人の共感を得られ易いと咄嗟に判断したからだと思います。
このシーンは、『田舎なアメリカ』を意識していないとうっかり見逃してしまうかもしれません。私は、個人的にはこのシーンは是非じっくり観て欲しいなと思います。
アメリカの中の対立
世界中で支持よりも反発が強いトランプ大統領の強固な支持者の多くは、この『田舎なアメリカ』に住む善良で普通な白人のアメリカ人です。それに対して、新しいビジネスが生まれるエネルギーが沸いている東海岸ニューヨークも、西海岸シリコンバレーも、たくさんの外国人と、白人以外の移民の人達が活躍しています。
この対比をさりげなく見せてくれるのが映画「ハミングバード・プロジェクト」です。
(映画のシーンより)
この映画がアメリカでどのような評価を受けているのか細かいところまで知りませんが、ジェシー他主要キャストは全員演技派で知られている俳優、女優で、余りにも演技力があり過ぎて、原作となった本の方が翳んでいるとも聞いています。
それくらい、アメリカ人にとっては、『田舎なアメリカ』と『新しいビジネスを生む大都市』の対立が深刻なのかもしれません。
私が頻繁にニューヨークに行っていたのはずいぶん前ですが、改めて、今アメリカが抱える問題を気が付かせてくれた映画でもあります。
To be continued