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ハミングバード・プロジェクト-0.001秒の男たち-
普段は、NewsPicksで、金融のおすすめピッカーとしてコメントを書いているArai Kaoruです。
今回は、ちょっとしたご縁があり、世界一の金融都市であり世界中のビジネスドリーマーが集まるニューヨークを舞台にした映画「ハミングバード・プロジェクト‐0.001秒の男たち‐」(9月27日(金)から、TOHOシネマズを始め、全国の映画館で上映が始まっています)について語ってください!という有難い機会を頂きました。
主役はジェシー・アイゼンバーグ
「ハミングバード・プロジェクト‐0.001秒の男たち‐」で主人公のヴィンセント・ザレスキを演じるのは、映画「ソーシャル・ネットワーク」でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたジェシー・アイゼンバーグ。ビジネスの核心に迫る映画を演じたら彼の右に出る者はいないのではないかと思われるくらいリアルなマーク・ザッカーバーグを演じて、一躍注目を浴びました。
かく言う私も、「ソーシャル・ネットワーク」は、当時先行上映していたアメリカで風邪を引いてすることがなくて偶然観たのですが、彼の演技とベンチャービジネスの裏側を赤裸々に描いた映画にぐいぐい引き込まれました。
そのジェシーが、今度は、ニューヨークからカンザス州のデータセンターまで1,600kmを最短の一直線で専用回線を敷き、リーマンショック後の金融取引規制強化の中で、新しい収益の手法として頭角を現しつつあった高速取引をブラッシュアップして一攫千金を得るために投資家から資金調達するのです。周囲から「You are crazy」と言われながらもプロジェクトを進めたロシア系アメリカ人ヴィンセントを演じています。
監督はキム・グエン
監督を務めるのは、キム・グエン。大衆映画化しているハリウッド映画とは一線を画した実力派監督として、シリアスな社会派映画を生み出しています。アフリカの少年兵問題に焦点を当てた「魔女と呼ばれた少女」は世界25か国以上で公開され、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、ベルリン国際映画祭でも話題になりました。
ジェシーとキム・グエンが組んだ映画ということで、否が応でも「ソーシャル・ネットワーク」を彷彿させるのですが…
(映画のワンシーンより)
さて、この「ハミングバード・プロジェクト‐0,001秒の男たち‐」は、ハリウッド風にコミカルにニューヨークの金融ビジネスを揶揄する映画とは違い、はっきり言ってかなり地味です。地味な分、とてもリアルなニューヨークを描いています。
ジェシーの英語は聞き取りやすい発音ながら相変わらず早口で、滅多に目が笑わないシニカルな表情が、ニューヨークという冷酷な金融都市で、チャレンジャブルなビジネスにすべてを賭けて、アメリカンドリームを夢見る運命に翻弄される男の憂いを上手に表現しています。
そのジェシー演じるヴィンセントは、天国と地獄が共存するニューヨークというビジネス街で、アメリカンドリームという天国を目指して、「1600kmの専用線を敷く」というCrazyなビジネスアイデアで、投資家を説得します。この辺りの映画のテイストはかなり地味で、ハリウッド映画と違い、リアルなニューヨークの陰鬱な金融街を忠実に再現していて、実際にニューヨークで働いたことがある人でも、「ああ、こういう場面あるよね…」と納得できると思います。
この全編を通じて感じるリアリティさがこの映画の最大の魅力だと思います。
ニューヨークはアメリカではない…
『ニューヨークはね、アメリカではないんだよ。ニューヨークはニューヨーク。アメリカは広大な田舎さ!』
昔、私がニューヨークに行った時、隣に座った50万円以上するであろうスーツをバシッと着こなしたビジネスマンに言われたセリフです。
この記事を書くために、映画を自宅で一人観ながら、私はもう10年以上前に聞いたこのセリフを思い出しました。
そう…
アメリカは偉大なる田舎な大国であり、ニューヨークは全く別物で、ニューヨークはニューヨークなのです。
この映画を観て、改めてアメリカという国の奥深さを感じました。
To be continued