マネックスグループの仮想通貨事業の展望~米国を視野に~

マネックスは米国を視野に!

今日のブルームバーグニュースで、マネックスグループの松本社長のインタビュー記事が取り上げられており、久しぶりにコインチェック買収後の状況を垣間見ることが出来ました。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-05-17/P8QVAB6JTSEW01

このインタビュー記事によると、松本社長は買収をしたコインチェックについて、日本での仮想通貨取扱事業者の登録手続きを進めつつ(登録が出来るような体制構築を進めているという意味と理解しました)、そのターゲットとするマーケットとして米国を視野に置いているということです。

(以下、ブルームバーク記事より引用)
「米国でのクリプトカレンシー(仮想通貨)の法的枠組みは、どうやら通貨の送金か、コモディティーか、証券なのか、定まっていないようだ。また州ごとにルールも異なるため注意深く調査している」とした上で、「端的に言えば、答えはイエスだ」と進出に意欲を見せた。

5月のGW中に書いた記事で取り上げていますが、イーサリアムについては有価証券として取り扱うべきではないかという意見が米国監督関係者より出てきていることは日本でも認知されており、また、Rippleについては、その運営開発を行っているRipple Inc.という事業主体者がいて、銀行間送金に活用されることを事業戦略の中で当初より明らかにしています。

https://youcanknowit-tech.com/2018/05/04/イーサリアムethereumは有価証券か%ef%bc%9f-揺れる仮想通貨/

ブルームバーグの記事によると、松本社長は、「法的枠組みが定まっていない。」とありますが、私見としては、今後は仮想通貨として一つの括りで法的枠組みや規制を決めることは現実的でないと思っています。

仮想通貨は進化する

仮想通貨には、Rippleのように事業主体者が企業として存在するものから、ビットコインのように中央集権管理者がいないもの、イーサリアムのように財団が一定の管理を行っているものなど、その運営形態はかなり異なっています。また、仮想通貨そのものの仕組みも、同一ではなく、ブロックチェーン技術をベースにしているものと一括りで語れない段階(技術開発が進んでいるという意味です)に来ています。

なお、日本ではブロックチェーンというのが一般的ですが、海外では、分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology、略してDLT)と呼ばれる方が一般的とのことです。
実際に、Money20/20でも、セミナーのカテゴリーで「Blockchain」とは記載されていません。

ヨーロッパでは、リヒテンシュタインのように、国を挙げて仮想通貨(イーサリアム)の技術開発に取り組んでいる国もあります。これは、ユーロ圏として法定通貨を共通化してしまったことにより、概して不利益を被る小国のドイツのような発言力の大きい大国に対する対抗措置戦略とも見られています。今回のMoney20/20では、リヒテンシュタインから仮想通貨関連会社の参加があるようなので、お話を聞ければいいなと思っています。

海外での仮想通貨取引所

また、この記事では、松本社長より、仮想通貨事業者として日本だけではなく米国もマーケットとして視野に入れているということが明らかにされています。
そうなると、コインチェックの買収価格である50億円はけして安いとは言えないのではないかと思います

海外の仮想通貨取引所の規模や、そのシステムレベル、コンプライアンスレベル、また利用者の利便性(プラグインの用意など)などは、日本の仮想通貨事業者とは比較になりません。

(以下は世界最大の仮想通貨取引所であるBinanceのサイトとUIです)

 

 

 

 

 

 

 

特にコインチェックは、芸能人を使った派手なCMなどで特に20代から30代の若者を対象に事業規模を拡大してきました。
3月にブログで取り上げていますが、コインチェックのユーザーは、ブロックチェーン、Fintechと言った仮想通貨関係の専門用語の意味を理解していない人の割合がかなり高いものでした。
言ってみれば、「億り人ドリーム」というトレンドに乗った投機家が多かったわけです。

https://youcanknowit-tech.com/2018/03/30/ところでfintechって何%ef%bc%9f/

海外、特に米国を視野に置いた場合、必要とするシステムやコンプライアンスのレベルは、コインチェックとは比べようもありません。
特に米国では、Patriot Act、OFAC等の規制によりマネーロンダリング規制が日本より格段に厳しいわけですから、そうなると、買収した資産や人材で十分とは言えないでしょう。

更には、海外の大手仮想通貨取引所の手数料は、0.25%(最大手のBinanceの例)程度と、コインチェックが徴収していた売買時のスプレッドでは競争力が全くありません。

しかしながら、マネックスはネット証券会社としてのノウハウがあるわけですから、その点は当然ですが、松本社長には戦略が描けているものと期待したいと思います。

To be continued

大学卒業後、官僚として働く。NYに遊びに行った時、ウォール街をぶらついていた時の軽い閃きから、公認会計士を目指そうと思い立ち、心機一転、電卓も使えないのに公認会計士試験の勉強を始める。 1年後無事合格するも、当時は公認会計士は大変な人余り状態、かなり苦労をして中堅監査法人に就職・・・。 しかし、仕事と上司には恵まれ、株式公開準備業務、国際部の立ち上げなど貴重な体験を経て、図らずとも独立。その後、事業会社のCFOや社外役員などを経験し、ブランドプリペイドカード発行事業を手掛けるなど、涙と笑いに包まれた経験を続ける。時々、当初の思惑と現実のギャップに日々苦闘と笑いを繰り返す毎日を過ごしている。 In English https://www.linkedin.com/in/kaoru-arai-28332370/

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