たかがKYC、されどKYC…

随分前、まだ私がアメーバブログを使っていた頃、KYCについてブログを書いてみたことがあった。当時は、KYCとネットで検索をしても、それが、「Know your customer」の略であり、本人確認手続きであることを書いてあるサイトは少なかったと記憶している。

その時も書いたことであるが、日本はKYCがやり難い国である。

大抵の国では、日本で言うところの「マイナンバーカード」の保持が義務化されており、そのカードを使ってKYCをすることが極めて一般的である。

日本のマイナンバー(カード)のように、その利用使途が限定されているものは、恐らく例外的であり、所謂本人確認をするために、正規にその国に住んでいるのであれば持っていなければ生活にも支障をきたすはずである。

逆に言うと、それを持っていないと生活に支障をきたすので、偽造作成のニーズも高く、米国のSNC(ソーシャルナンバーカード)はパスポートと同じくらい盗まれるリスクが高いらしい。日本でマイナンバーカードが盗まれて、不正に利用されたというニュースはまだ聞いたことがない。それは、盗まれる人がいないというより、盗むだけのニーズが無いということなのだと思う。

 

さて、マイナンバーカードの代わりにKYCに使われるのは、大抵は運転免許証である。

ブランドプリペイドカードについては、ATMアクセスがあるもの、リチャージをして一定額以上の利用が可能なものを発行する場合には、KYCが必要である。

それは、一部は資金決済法の規制によるものであり、一部はブランドが自ら定めたルールによるものである。

一般的には米国ではそのKYC手続きがとても厳格であるが、日本ではKYCが難しいので、某ブランドでは、日本向けの例外を認めている。

そうでもしないとブランドプリペイドカードの普及は難しいと妥協をしたのだと思う。

さて、資金決済法の規制によるKYCであるが、アプリを介してカードを発行しているIssuerが従来カード発行に際してKYCをする時は、運転免許証を、ネットを介してアップロードさせることが多かった。この手続きは正直言って大変面倒なものであった。

と思っていたら、最近Line Payはこの免許証のアップロードによるKYCを止めたらしい。

その代わりに、銀行口座をLine Payのアカウントと紐づけることにより、KYCをするという建付けにしたのである。

具体的にはLine Payのブログに記載されているので詳しくはそちらを読んでみて欲しい

最近の大抵の銀行には、ネット上で口座振替等の手続きを行うことが出来るようになっているので、このLineの銀行口座との連携もそれを活用しているものと思われる。

 

 

 

では、なぜ銀行口座と連携させればKYCをすることになるのか?

 

それは、銀行口座を開く際に、現在はかなり厳格なKYC他確認手続きを必要とするようになったからである。

その根拠となるのは、犯罪収益移転防止法という法律である。約2年前よりその法律により、本人確認手続きに厳格性を要求するようになったのである。

興味のあるからは、こちらが参考になると思うので、参考にして欲しい。

https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/data/filowcls20161001.pdf

 

要は、

「犯罪収益移転防止法に基づき運営されている銀行口座の持ち主であることが担保されれば、その口座の持ち主であるLine Pay Accountのユーザーに対して、その銀行が行ったKYC手続き等を行ったものとみなすことが出来る」

というのが基本ロジックであろうかと思う。

細かいことを言えば、口座を開設していても、一定額以上の送金や海外送金などでは別途手続きを必要とするので、それに該当しないように取引金額等に制約を掛けている。

 

日本では、たいていの人は銀行口座を持っていることから出来るKYCであるが、将来的に、銀行が諸外国のように口座維持手数料などを徴収し始めた場合には、少額の残高しかない人は銀行口座の維持に費用がかかるようになる。

最近新聞でも、ちらほらと口座維持手数料の導入の可能性についてコメントしている記事が出てきているので、これもいずれ時間の問題だと個人的に思っている。

 

その時になったら、今の形のKYCは一部の人にとってはコストが掛かる手続きということになるのであるが、日本ほど金融取引において広く浅く徴収されるコストがない国は珍しいので(逆に、そのしわ寄せが、一部の取引の手数料が高額であることの要因でもあるわけではある)、今のLine PayのKYCのやり方も、一過性かもしれない。

 

さて、勘が良い人であれば気が付くと思うのであるが、昔からある銀行口座であってもこの手続きは有効なのであろうか?

 

犯罪収益移転防止法においては、いわゆる反社会的勢力の人は、銀行口座は持てないことになっている。米国で言うとOFAC Checkと言われるものである。

海外のカードプロセッシングシステムでは、米国のOFAC CHECKが仕組みとして組み込まれているものがある。日本でも、銀行や証券会社などは、同様な確認手続きを裏側でやっているのであるが、昔に開設された口座に対しては遡って改めて現在必要とされている確認手続きをしているのであろうか?

 

やや疑問を感じるのは私だけではないと思う。

 

大学卒業後、官僚として働く。NYに遊びに行った時、ウォール街をぶらついていた時の軽い閃きから、公認会計士を目指そうと思い立ち、心機一転、電卓も使えないのに公認会計士試験の勉強を始める。 1年後無事合格するも、当時は公認会計士は大変な人余り状態、かなり苦労をして中堅監査法人に就職・・・。 しかし、仕事と上司には恵まれ、株式公開準備業務、国際部の立ち上げなど貴重な体験を経て、図らずとも独立。その後、事業会社のCFOや社外役員などを経験し、ブランドプリペイドカード発行事業を手掛けるなど、涙と笑いに包まれた経験を続ける。時々、当初の思惑と現実のギャップに日々苦闘と笑いを繰り返す毎日を過ごしている。 In English https://www.linkedin.com/in/kaoru-arai-28332370/

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